ミンダナオに吹く風

ミンダナオに吹く風(16) 和平に向けて団結し始めた人々 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

和平に向けて団結し始めた人々

「ミンダナオ島にIS(イスラーム国)が侵入してきている」という情報は、すでにマラウィの戦争が勃発する3年ぐらい前に、ミンダナオ和平国際監視団のメンバーを通じて耳にしていた。ISが勢力を拡大していった結果が今回のマラウィの戦争であり、短期間に市の建物が徹底的に破壊された。多くの避難民がいまだに家に帰れないのは、悲しいことだ。

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ミンダナオに吹く風(15) 遠く離れたマラウィの戦争 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

遠く離れたマラウィの戦争

奨学生たちが暮らす私たちの「ミンダナオ子ども図書館」はフィリピン・ミンダナオ島の中央に位置するアポ山麓の町キダパワンにあり、そこからマラウィ市までは、支援物資を積んだトラックだと13時間もかかる。ミンダナオ子ども図書館を出発して縦断し、北の海辺の町カガヤンデオロを通ってさらに走って内陸に向かい、イリガンを抜けてようやくたどり着く。マラウィは湖畔の街だ。

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ミンダナオに吹く風(14) グラウンド・ゼロの少女 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

グラウンド・ゼロの少女

フィリピン・マラウィ市にほど近い、ドームの下につくられた避難民キャンプ。屋根はあるものの、コンクリートの床の上にシートで区切られた家族の居場所は、イリガン市のキャンプに比べると格段に小さい。3畳ぐらいのスペースに親子が6人で寝ていたりする。しかし、それでも子どもたちは中から飛び出してきて、みんなで一緒に遊んだり、掃除や料理を手伝ったりしている。そんな子どもたちの様子を見ながら、案内してくださっている福祉局の職員の方がこう言った。

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ミンダナオに吹く風(13) マラウィ市近郊の避難民キャンプを目指して 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

マラウィ市近郊の避難民キャンプを目指して

フィリピン・ミンダナオのマラウィ市は、空爆も含む徹底的な戦闘で街全体が破壊しつくされており、見るも無残な様相だ。去年の10月に戦争終結宣言が出されたこともあり、家が破壊から免れた、近郊の市町村からの避難民たちに限って、10カ月ぶりに帰郷が許されはじめていた。避難民の表情にも、安堵(あんど)感が広がっていきつつあるのが感じられた。

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ミンダナオに吹く風(12) ヒナイヒナイ バスタ カヌナイ(ゆっくりだけれど絶えることなく) 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

ヒナイヒナイ バスタ カヌナイ(ゆっくりだけれど絶えることなく)

昨年の暮れ、ミンダナオ子ども図書館(MCL)のスタッフたちと、戦争避難民の支援に向かった。フィリピン・ミンダナオ島のマラウィで昨年5月に始まったイスラーム過激派と政府軍との戦いは、昨年10月23日に政府が戦争終結宣言を出し、表向きは戦闘が収まったとして、マラウィ市の近郊の避難民キャンプまで足を運び、救済活動ができるようになったからだ。そのため、今回は、破壊されたマラウィ中心部から逃げてきた人々が多く住む避難民キャンプを訪れて、奨学生採用の調査をした。

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ミンダナオに吹く風(11) 新たな戦争で被害を受けた子どもたちのもとへ 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

新たな戦争で被害を受けた子どもたちのもとへ

マニラ空港でこの原稿を書き始めた。これからダバオ空港に飛び、ダバオからミンダナオ子ども図書館(MCL)のあるキダパワン市を経由して、翌日、スタッフたちと、8時間ほど車に乗ってマラウィ市に向かう。マラウィ市は、昨年イスラーム国(IS)に忠誠を誓うテロ集団に占領され、政府軍の空爆で破壊された都市だ。

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ミンダナオに吹く風(10) ミンダナオに関心を抱く日本の若者たち 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

ミンダナオに関心を抱く日本の若者たち

2年ほど前から、妻のエープリルリンと、現在中2の長女、小6の次女と一緒に日本に滞在しつつ、ミンダナオに通う生活を送っている。

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ミンダナオに吹く風(9) 「演習」という名の「実戦」 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

ミンダナオで繰り返されてきた戦争に関しては、日本ではほとんど報道されなかった。理由は分からないが、毎年2カ月間、ミンダナオ子ども図書館の活動報告会で日本を訪れても、現地で起こっていることを知っている人はほとんどいなかった。

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ミンダナオに吹く風(8) 「くり返しくり返し」争いは続く 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

戦争で山や湿原から逃げてきた人々は、町の近くの国道や市道沿いのわずかな空き地や道端に、切ってきた木の枝を柱にして避難小屋を作っていた。ヤシの葉を編んだものを葺(ふ)いて、床には同じようなヤシの葉を編んだものや、ヤシの葉そのものをそのまま敷いていた。

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ミンダナオに吹く風(7) 戦争とNGO 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

戦争とNGO

東ティモールの独立に伴う騒乱は、ミンダナオ紛争が拡大した時期と重なる1999年のことだ。ぼくは偶然、120万を超す戦争避難民のいる北コタバト州のピキット、リグアサン湿原地域に、バリエス司教に誘われて足を運び、それがきっかけで、避難民救済支援活動を開始して、ミンダナオ子ども図書館を創設するにいたった。

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