ミンダナオに吹く風(11) 写真・文 松居友(ミンダナオ子ども図書館代表)

新たな戦争で被害を受けた子供たちのもとへ

マニラ空港でこの原稿を書き始めた。これからダバオ空港に飛び、ダバオからミンダナオ子ども図書館(MCL)のあるキダパワン市を経由して、翌日、スタッフたちと、8時間ほど車に乗ってマラウィ市に向かう。マラウィ市は、昨年イスラーム国(IS)に忠誠を誓うテロ集団に占領され、政府軍の空爆で破壊された都市だ。

ミンダナオ子ども図書館では、立正佼成会からのご支援も受けて、夏からマラウィ市の隣のイリガン市に避難してきている避難民の救済支援を行ってきた。日本から送られてきた古着を渡したり、支援金で買った寝具のシートや毛布、お米や缶詰などの食料品を配給したりした。その後、戦争でつらい経験をして落ちこんでいる子供たちの心を癒やすため、絵本の読み語りや、唄や踊り、そして炊き出しをしてきた。

今までミンダナオ子ども図書館が過去15年間避難民の救済活動を行ったイスラーム地域は、キダパワン市からコタバト市に向かって1時間半ほど行った東南アジア最大のリグアサン湿原地帯だ。7メートルを超えるワニや5メートルもあるウナギ、巨大なコイも生息していて、5000世帯を超す漁民たちが住んでいる。

2001年にそこで見た120万を超す避難民たちは、道脇に棒を建ててヤシの葉を葺(ふ)いたような寝床で、本当に惨めな状態での避難生活だった。そこに比べると、マラウィ市は比較的大きな都市ということもあって、避難民たちは、少なくとも屋根のあるイリガン市の学校などに避難している。とはいえ、市内は、激しい空爆でセメントの家屋や建物がことごとく破壊されてしまった。

現在のマラウィ市の状況は、ドゥテルテ大統領の発令した戒厳令のもと、政府軍がテロ組織を徹底的にたたき、かつての最大の反政府勢力であるモロ・イスラム解放戦線(MILF)が戦闘に加わらず、むしろ独自に分離派を抑えた結果により、秋頃から以前の落ち着きを取り戻したようだ。ただ、楽観視できない。追い込まれたテロ集団が、分離派と結託し、戦闘をミンダナオ全域に広げようと試みているからだ。これを受け、戒厳令の期間は、来年まで延長された。

今までミンダナオ子ども図書館は、現地の福祉局やボランティアの若者たちと連携して、イリガン市に避難している避難民の人たちに、支援物資を渡す活動を常としてきた。しかし今回は、爆撃で破壊されたマラウィ市まで、福祉局や自治体との連携に加え、国軍の協力も得て入っていく予定だ。

支援の目的は、不幸な戦争避難民の子供たちの中でも、特に親を失った子供たち、また、家庭崩壊や貧困で学校に行けず、生活もままならない状況の子供たちをミンダナオ子ども図書館の奨学生として選ぶこと。これまで、奨学生を選ぶときには、必ず社会福祉士のスタッフと一緒に本人の住んでいた家を訪ね、近隣の方々にインタビューをして、生活状況の困難さと本人や保護者の意思、希望を確認して最終決定してきた。

マラウィの子供たちは、現在どのような状況に置かれているのか――。次回から活動の詳細を報告する。

プロフィル

まつい・とも 1953年、東京都生まれ。児童文学者。2003年、フィリピン・ミンダナオ島で、NGO「ミンダナオ子ども図書館」(MCL)を設立。読み語りの活動を中心に、小学校や保育所建設、医療支援、奨学金の付与などを行っている。第3回自由都市・堺 平和貢献賞「奨励賞」を受賞。ミンダナオに関する著書に『手をつなごうよ』(彩流社)、『サンパギータのくびかざり』(今人舎)などがある。近著は『サダムとせかいいち大きなワニ』(今人舎)。