TKWO――音楽とともにある人生♪ トランペット・本間千也さん Vol.3

練習と、生活を支えるためのアルバイトに日々を費やした学生時代を経てプロの道に進み、2009年に東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)に入団した本間千也さん。現在は、楽団員としての演奏に加え、学生への指導、ミュージカルでの演奏に携わるなど多彩な音楽活動を繰り広げている。今回は、自身の経験を基に、吹奏楽に取り組む学生たちにアドバイスを送ってもらった。

上達の秘訣は 自分が理想とする演奏のイメージを持つこと

――吹奏楽部で頑張っている中学生、高校生に上達の秘訣(ひけつ)や、練習のアドバイスを!

皆さんには、憧れのプレーヤーや楽団はありますか? 僕自身の経験から、「こういうふうに演奏したい」という、具体的な理想像があると上達は早いと思っています。

僕は今、さまざまなところでトランペットのレッスンを行うことがありますが、はっきりとした理想像を持っている学生は、技術を早く習得していきますね。一方、漠然と練習している学生は、いくら指導しても、なかなかうまくなりません。

ただ、実際はどうかというと、憧れのプレーヤーや楽団があり、その演奏を目標にしている学生は、なかなかいないようです。有名なトランペット奏者の名前も知らないことが少なくありません。

自分が理想とする演奏の具体的なイメージを持つことが重要です。モチベーションを高くするためにも、理想像を持って練習することを強く勧めます。

――「コンクールで金賞を取りたい」「上の大会に進みたい」という思いだけでは、上達しないということですね

そうですね。レッスンでは、よくこんな例え話をするんです。

自分がレストランのコックで、「おいしいインドカレーを作ってごらん」と言われたとします。しかし、本場のインドカレーを食べたことがない人は、味も分かりませんし、ましてや作り方なんて知る由もありません。食べたことがあれば、こんな野菜が入っていて、スパイスはこれを使っているんじゃないかと、試行錯誤することができます。

音楽も同じです。ぜひ、それぞれの楽器のプロの演奏をよく聴いてみてください。

――練習とともに、「聴く」ということが、大事なのですね

本間さんが高校生の時、CDを何度も聴いて、書き起こした『トランペット協奏曲』の楽譜

そう思います。僕は佐渡島で育ちましたから、吹奏楽でいえば閉ざされた世界だったので、トランペットのレッスンを受けたことはありません。トランペットを始めたばかりの頃は、憧れの先輩が身近にいたので、その先輩の演奏をまねようとしていました。

そんな時、ラジオでトランペット奏者のウィントン・マルサリスさんの演奏を聴いたんです。「トランペット協奏曲」が流れていて、トランペットでこんなことができるんだと、感動しました。すぐにCDを買いに行こうと思い、船で新潟市に出かけたのを覚えています。楽譜は売っていなかったので、自分で何度も聴いて楽譜に起こしました。CDを繰り返し聴きながら、その音を手本にして、速い指使いや、タンギング(舌を使って空気の流れを制し、音の区切りや立ち上がりを明瞭にする奏法の一つ)をまねて練習したことが、自身の技術の向上につながりました。

その時の楽譜は今も大事にしています。

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