幸せをむすぶ「こども食堂」(8) 文・湯浅誠(認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)

画・福井彩乃

コロナ禍で引き寄せた応援

前回、コロナ禍でこども食堂の「つながり続ける力」が発揮された、と書きました。一堂に集まって会食することが難しくなっても、半数近いこども食堂が弁当配布や食材配布でなんとか人々とつながり続けようとしました。コロナ禍が長引く中でその割合はむしろ増え、今では7割のこども食堂が弁当・食材配布等を行っています。

このことは人々から二つの反応を引き起こしました。一つは批判です。こども食堂を「不要不急の会食」と同じだと見ている人にとって、今、人と人が接触する機会をつくることは「とんでもないこと」です。市役所に通報されてしまった、という話を聞きました。

もう一つがその逆、応援です。たとえばショッピングモールなどを展開するイオン株式会社は、最初の緊急事態宣言が出た2020年4月の時点で、こども食堂を応援するための店頭募金を実施してくれました。元SMAPの3人組がつくる「新しい地図」というグループは、設立した基金の最初の寄付先に私たちを選んでくれたし、著名なサッカー選手の長友佑都さんもクラウドファンディングで集めたお金の一部を私たちに託してくれました。ゼスプリインターナショナルからはキウイフルーツ、ネスレ日本からはお菓子のキットカット、株式会社ポケモンからはグッズなど、たくさんの食品、物資の提供もありました。コロナ禍で新たにこども食堂の応援団に加わってくれた企業・団体・個人は多数に上ります。

この人たちは、コロナ禍で暮らしの大変な人たちが増えていることに心を痛めていた人たちです。きっと今大変な人がいるんだろうが、自分自身はそれがどこの誰だかわからない。では誰がその人たちとつながっているのかと世間を見回したときに目に入ってきたのが、つながり続ける努力を続けていたこども食堂の人たちでした。ああ、この人たちだ。この人たちを支えることが、今大変な人たちを支えることになる――そう考えてくれたのだと思います。

こうして、私たちの団体にはたくさんの寄付や物資が集まりました。私たちはそれを、せっせと全国のこども食堂に回しました。お金もなく、人手も十分でなく、ときに批判されてしまうこともあるこども食堂の人たちががんばり続けられるよう、応援したかったからです。結果として、2020年に私たちが全国のこども食堂にお配りした寄付金は1.2億円、物資は売価換算で2.7億円に上りました。すべては、こども食堂の人たちがコロナに負けずにつながり続けようとしたことが引き寄せたものです。

「危機に本質が現れる」という言葉がありますが、コロナ禍におけるこども食堂の活動は、まさにこども食堂が、何があってもつながり続けようとする場だという本質を明らかにしました。そしてそれをちゃんと見ていてくれた人たちがいる。そのことは、私を深いところで勇気づけました。

「捨てる神あれば、拾う神あり」――コロナに負けず活動し続けたことで、批判も呼び寄せましたが、たくさんの応援も呼び寄せました。リスクをとって「動く」というのは、このようなことを言うのだと思います。コロナは大変な厄災です。でもそこに表れたこども食堂のみなさんの尽力は、コロナとともに記憶に留(とど)められるべきものだ、と私は思っています。

プロフィル

ゆあさ・まこと 1969年、東京都生まれ。東京大学法学部を卒業。社会活動家としてホームレス支援に取り組み、2009年から3年間内閣府参与を務めた。現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。これまでに、「こども食堂安心・安全プロジェクト」でCampfireAward2018を受賞した。

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