幸せをむすぶ「こども食堂」(5) 文・湯浅誠(NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)

画・福井彩乃

気持ちを盛る“器”

こども食堂は、子どもを真ん中に置きつつも、地域の多くの住民が多世代で交流するみんなの居場所だとお伝えしてきました。このようなこども食堂がわずかな期間に全国に広がったのは、人々がこうした場を求めていた証(あかし)です。それはこども食堂が、「地域や社会、子どもたちの現状に課題意識を持っている人が、その気持ちを盛るための絶好の“器”になっている」ということでもあります。

気持ちはあるが、具体的にどうしたらいいかわからない、ということは、よくあります。私も地球環境に問題意識は持っていますが、課題が大きすぎて途方に暮れるようなところがありました。そこに「マイバッグを持つ」という行動が示されたので、それならできる、と今はマイバッグを持って買い物をしています。マイバッグが、私の気持ちを盛れる“器”になっています。

こども食堂も同じです。地域がさびしくなった、うちの地域にも課題のある子はいるらしい、と問題意識を持っても、少子化や人口減少、地域の衰退、貧困や虐待といった課題は大きすぎて手に負えない気がします。しかし「ごはんを作って一緒に食べる。それならできる!」と感じてもらえたのが、こども食堂でした。

これは、裏を返せば、「気持ちのある人は、たくさんいる」ということでもあります。よく「今のご時世、みんな自分のことしか考えなくなっている」といった嘆きを聞くことがあります。本当にそうだとしたら、どんなにすばらしい“器”があっても、それを手に取る人は少ないはずです。でも、こども食堂という“器”は、多くの人が手に取ってくれて、瞬く間に全国に広がりました。つまり、なかったのは“器”で、気持ちを持っている人はたくさんいた、ということです。

私は、そのことに勇気づけられます。「世の中、捨てたもんじゃない」という言い方がありますが、こども食堂の広がりは、私にとってはまさに「世の中、捨てたもんじゃない」ことの証になっています。

だから、いま私は「地域に人材はいるはず」と話しています。「うちの地域には、地域のことを考えて動いてくれるような担い手が少ない」と嘆く人がいますが、その方には「本当にそうか?」と3回自問してみてほしい、とお伝えしています。気持ちを持っている人はたくさんいるけれど、何をしたらいいかわからないというだけなのではないか。自分の見えている範囲が狭すぎるのではないか。気兼ねなく話せる雰囲気がないのではないか。

こども食堂は、応援してくれる人たちの気持ちも引き出します。「うちの地域から、こんなにたくさん応援してくれる人が現れるなんて、始める前は予想していなかった」という言葉を、多くのこども食堂運営者から聞きます。運営者だけでなく、応援してくれる人たちにとっても、こども食堂は格好の“器”です。

地域や社会をよくしたい、という人たちの気持ちを盛る“器”としてのこども食堂。その広がりは、人々の温かい気持ちに形を与え、地域と社会にぬくもりをもたらします。まさに時代が求めている取り組みだと言えるでしょう。

プロフィル

ゆあさ・まこと 1969年、東京都生まれ。東京大学法学部を卒業。社会活動家としてホームレス支援に取り組み、2009年から3年間内閣府参与を務めた。現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。これまでに、「こども食堂安心・安全プロジェクト」でCampfireAward2018を受賞した。