幸せをむすぶ「こども食堂」(4) 文・湯浅誠(NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)

画・福井彩乃

こども食堂はみんなの居場所

地域のにぎわいをつくる「こども食堂」は、貧困家庭の子にも、「ふつう」の家庭の子にも、すべての子どもにとって意味のある場所だという話をしてきました。しかし、それだけではありません。こども食堂は大人にとっても意味のある場所です。

こども食堂なのに大人が行っていいの? と思う方もおられるかもしれませんが、全国に5000カ所あるこども食堂の8割は、誰が行ってもいい場所で、大人もたくさん参加しています。

ではなぜ、「こども」食堂なのでしょうか? 一つの事例を紹介します。

鳥取市に「河原町ふれあい食堂」というこども食堂があります。あるテーブルではひとり暮らしの高齢者の方たちがお食事をされていました。ある方が車でお宅を回って、みなさんをお連れになったようです。そして別のテーブルでは、乳幼児を抱えたお母さんや小学生の子どもを連れたお母さんが一緒に食事をしていました。

その親子のテーブルで私が話をしていたとき、赤いセーターを着た地域の高齢の男性が子どもたちにプレゼントを配りに回ってきました。12月だったので、クリスマスプレゼントを配っていたのです。

「はいー、プレゼントがありまーす」とその男性は子どもたちに袋を手渡して回りました。子どもたちは食事を中断してすぐに中身を確認していました。寄付でもらったお菓子などが入っていました。私には、その男性が穏やかな言い方ながらも、とてもうれしそうに配っている姿が印象的でした。この方は、こうしてこども食堂で役割を持ち、子どもたちにプレゼントを配ることで逆に元気をもらっている――そう思いました。この場にいるのが全員高齢者だったら、この男性はこんなにうれしそうに、こんなに誇らしげにはならないんじゃないか――失礼ながら、そんなことも思いました。

あとで、この場を主宰されている方に、なぜこども食堂と名乗るのかと聞いてみました。その方の答えはこうでした。

「たしかに、地域の高齢者の方たちも来られているので、『地域食堂』であり『みんな食堂』です。でも私たちはあえて『こども食堂です』と言っています。それは、『みんな食堂をやるから、協力をお願いします』と呼びかけたときに、地域のみなさんから引き出される力が100とすると、『こども食堂をやるから、協力お願いします』と呼びかけたときには、引き出される力が120にも150にもなるからです。だから仮にたった一人しかいなかったとしても、子どもさんがいる場というのは大事だと思っています」

赤いセーターを着た男性の姿と重なって、その答えに私は深い納得感を抱きました。「子どものために」と言うからみんながひと肌ぬごうと思ってくれる。そこに自分の役割を見いだし、それが張り合いになり、元気になる。子どもたちの笑顔を見て、自分も笑顔になる。それが「大人にも意味のある場所」という意味です。

こども食堂は「こども専用食堂」ではありません。こども食堂は、みんなの居場所です。そしてみんなの居場所は、子どもを中心に置くことで成り立っています。だから私たちは言っています。こども食堂は、子どもを真ん中に置いた多世代交流の地域の居場所です、と。

プロフィル

ゆあさ・まこと 1969年、東京都生まれ。東京大学法学部を卒業。社会活動家としてホームレス支援に取り組み、2009年から3年間内閣府参与を務めた。現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。これまでに、「こども食堂安心・安全プロジェクト」でCampfireAward2018を受賞した。