幸せをむすぶ「こども食堂」(2) 文・湯浅誠(NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)

画・福井彩乃

こども食堂って?(2)

前回、こども食堂は地域の多世代交流拠点だと書きました。子どもからお年寄りまで、地域の多様な人々が集う機会が減り続けてきました。しかし人々は、「減ったね」「さびしくなったね」と嘆くだけではなく、自らにぎわいを取り戻そうと動き始めています。

つながりが減っても、取り戻そうとする力が働く。それをレジリエンス(復元力)と言います。こども食堂の広がりは日本社会のレジリエンスがもたらしたものです。宮崎県宮崎市は、だからこうした居場所を広げる取り組みを「地域のちゃぶ台プロジェクト」と名づけています。サザエさん家のちゃぶ台。もはや家族では囲めなくなったあのちゃぶ台も、地域の人たちが集まれば囲める。そうしたつながりをつくろう、ということです。

同時に、こども食堂は地域に大変な子がいるのではないか、そうした子がここで元気になってくれたらうれしい、とも思っています。課題のある子にアンテナを張っています。だから、こども食堂には子どもの貧困対策としての側面もあります。ただ、その実像は人々が「貧困対策」と聞いてイメージするものとはだいぶ違います。具体的な事例を紹介しましょう。

福岡県のこども食堂に行ったとき、「コロッケ事件」というのを聞きました。あるとき、こども食堂でコロッケを出したら、小学校5年生の男の子が「何これ」と聞いたそうです。運営者の人たちは、それでこの子がその年になるまでコロッケを見たこともない家庭で育ってきたことを知りました。そのとき、こども食堂の人たちは「次は、メンチカツを出してみようか」と話し合っていました。

東京都のこども食堂の人から聞いたのは「雪の日事件」でした。雪の日にこども食堂を休止にしたところ、それまで来ていた中学生が「今日はやらないんですか」と電話をかけてきたそうです。そんなにこの場を必要としてくれていたんだと感じ入った運営者の人は、その晩のうちにその子に食事を持っていき、それがキッカケでその子の家族ともつながりました。今では母親も、そのこども食堂に来ているそうです。

「おなかすいたんだ。じゃあなんか作ろうか?」――家庭の中であたりまえに行われていることを「対策」と呼ぶのは大袈裟(おおげさ)に聞こえます。こども食堂で行われている「対策」とは、このようなものです。だから、運営者の人たちは「たいしたことは何もしていない」「おせっかいやいているだけ」と言います。

でも、相手は自分の子ではありません。地域の子に対して、「家族旅行に行ったことないんだ、じゃあ今度みんなで海水浴行こうか」「おうちで誕生日祝ってもらったことないんだ、じゃあ今度みんなで盛大に誕生会やろうか」と、自分にできることを、できる範囲で、でも迅速かつ柔軟にやっているのが、こども食堂の人たちです。それは、学校の先生が同じことに気づいたとして、給食のメニューを変えられるか、修学旅行を増やせるかと考えれば、学校のような公的サービスではなかなか提供できないものを提供していることに気づきます。行政がやるような「対策」ではないけれど、でもたしかに人が生きていく上でとても大切なことを行っている「対策」だと言えるのではないでしょうか。

プロフィル

ゆあさ・まこと 1969年、東京都生まれ。東京大学法学部を卒業。社会活動家としてホームレス支援に取り組み、2009年から3年間内閣府参与を務めた。現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。これまでに、「こども食堂安心・安全プロジェクト」でCAMPFIRE AWARD 2018を受賞した。