弱小チームから常勝軍団へ~佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」クリスマスボウル3連覇の軌跡~(1) 文・相沢光一(スポーツライター)

「3連覇達成の瞬間、選手たちはフィールドで大輪の“ヴィクトリーフラワー”を咲かせた」

部員不足と勝利への長い苦悩

クリスマスボウルで3連覇を達成した佼成学園は現在、高校アメリカンフットボール界を代表する強豪校になった。だが、日本一が視野に入る位置まで実力をつけてきたのは、つい最近のことだ。

創部は1976年。当初の20年あまりは東京都大会でもなかなか勝てない弱小チームだった。2005年、学校から強化指定を受けてクラブの強化体制が整った頃から、都大会で上位に入り、関東大会にも出場できるようになったが、それでも大事な試合で勝ち切れない状態が続いた。全国から目標にされる現在のような立場になることなど夢にも思えないチームだったのだ。

すべてのスポーツチームと選手は、競技力を高めて試合に勝つことを目標に活動している。当然、高校の運動部もそれに当てはまる。しかし、目標に到達できるところはごくわずか。多くの中から一歩抜け出す強い部をつくるには、一般の高校ではなかなか真似できない強化が必要になるからだ。その方法としては「より良い練習環境を用意する」、「有能な指導者を呼ぶ」、「スパルタ指導をする」、「才能ある選手を集める」といったことが挙げられる。こうした強化法が実を結んだところが大会でも勝ち上がり、強豪校と呼ばれるようになる。

強豪校として名を上げることは好循環を生む。黙っていても才能ある選手が集まってくるし、部内の競争は激しくなる。勝つのが当たり前という意識が生まれ、それが伝統になっていく。そしてますます他の高校との差が開いていくわけだ。

かつての佼成学園アメリカンフットボール部は、そんな強豪校を仰ぎ見る位置にいた。整っていたといえるのは練習環境だけ。小林監督は大学(日本大)、社会人(シルバースター)で活躍したスターだが、指導者としての実績は未知数だった。

また、小林監督はスパルタ指導をするタイプではないし、佼成学園が進学校のため大学受験にも配慮しなければならなかった。これでは大会に出場しても好成績は残せない。アメリカンフットボール部の存在は知られておらず、部員集めにも苦労した。就任当初は、1年生が入学すると小林監督が声をかけて部に勧誘していたのだという。強くなる要素はゼロといっていい状態だった。

だが、小林監督は気持ちを切ることなく指導を続けた。そして監督就任から23年がたった2016年、クリスマスボウル初出場で初優勝。快挙はそれだけにとどまらず3連覇を達成するまでになった。

「部員を集め、なんとか試合ができる状態だったのが10年、勝負になるようになって10年。そして26年たって、ようやくここまでたどり着きました。長かったですね」と小林監督は振り返る。

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