笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”(7) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子 (動画あり)

イラスト/中村晃子

『感情の無駄遣いに気をつけて』

前回は、継続の話をしました。毎日続かなかったとしても、「自分はダメだ」と思わないでください。リセットしてやり直せばいいだけ。挫折しないコツは、三日坊主を何回も繰り返せばよいと考えることです。

精神科医の樺沢紫苑さんによると、日本人は自分が立てた目標に対して、70%達成できていたとしても、「自分はまだまだ」と卑下してしまう傾向があるそうです。自己肯定感が低いのか、完璧主義なのかどうかは分かりませんが、どうもそれだけではないように思います。

高度成長期を経験している世代は、どんどん作ってばんばん売る感覚が残っています。経済が右肩上がりだった時代は、多少失敗しても後で挽回できるため、努力や根性が良いものと扱われ、時間の浪費に鈍感な人が多かったかもしれません。

もちろん、努力も根性も大切ですが、無制限に努力しても、好ましい成果が出るとは限りません。日本人は協力し合うことが得意ですが、人に気を使うあまり自分の限界を超え過ぎてしまっているように感じます。

また、「高齢者が周囲に止められているのに車を運転し、人身事故を起こした」といったニュースなど、テレビや新聞で報道されている痛ましい事件を目にするたびに哀悼し、自分にはどうにもできないことにまで心を痛め、気持ちが引きずられてしまう人が多いのも、周囲に気を使うことでの影響があるように思います。こうした出来事から学び、改善に努めるべきことはたくさんあります。でも、ネガティブな気分を引きずる必要はなく、加害者を責めるのは感情の無駄遣いにつながります。

良いニュースや自分もハッピーを分けてもらえる内容の時はまだいいのですが、芸能人の不倫や痛ましい事件など、負の感情を抱いてしまう出来事に接すると、知らないうちに自分の心身の健康に害を及ぼす可能性があるのです。「感情」に振り回されず、人々の心を動かす行動が、いじめや詐欺などの多くの人が「怒り」や「不安」を感じる社会のひどい事象を好転させるのだと思います。

笑いはネガティブな感情の“リセットスイッチ”になります。もし、感情の無駄遣いをしていると感じたら、両手を広げ、ハハハハハと声を出してみてください。笑う理由を見つける必要はありません。笑トレは、笑う動作を呼吸法としてやってみるのです。

今月紹介するのは、「イソギンチャク笑い」と「勾配笑い」です。二つとも、少し複雑な笑いなので、意識が集中でき、他のことを考えずに済みます。イソギンチャク笑いは、左右両方の手首をクロスさせ、グーパーしながら腕を∞(無限大)の字に動かしながら笑います。勾配笑いは、小さな笑いから、だんだん声を大きくしていく笑いの体操です。人間は、一度に一つのことしか考えられません。ネガティブな感情がやってきたら、心のリセットスイッチ、使ってみてください。

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プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫・神戸市生まれ。2009年にインドで笑いヨガを学び、帰国後に日本笑いヨガ協会を設立した。笑いは呼吸であると考え、一生「健康」と「ごきげん」を手に入れられる笑トレや笑いケアを開発し、高齢者のケア現場や企業のストレスケアの分野でも指導・講演活動を行っている。日本応用老年学会理事。著書に『ボケないための笑いヨガ』(春陽堂書店)、『大人の笑トレ』(ゴルフダイジェスト社)など。