笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”(13) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子 (動画あり)

イラスト/中村晃子

『体を変えれば心も変わる』

私たちの毎日は、うれしい日もあれば、落ち込む日もあります。体調の良い日もあれば、悪い日もある。どんな人間関係も、良い時とざわつく時があるのが自然です。それが当たり前だと分かっていても、できればストレスフリーを望みます。

しかし、ストレスは、心がけだけではどうにもなりません。気候や騒音、大気汚染といった環境や、自分の病気や障害といった身体条件もストレス要因だからです。「気合だ!」と頑張り過ぎたらエネルギーが切れ、心が折れて、やがて病気になるでしょう。

今、ストレスが原因の病気が増えています。過敏性腸症候群、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、頭痛、糖尿病、高血圧、ぜんそく、目まい、円形脱毛症、突発性難聴、アトピー性皮膚炎、腎臓病、循環器疾患など、病気の要因がストレスと関係ない診療科を見つけられないほどです。

ストレス解消方法を聞くと、「温泉」「カラオケ」「おいしいものを食べる」「気の合う仲間とのおしゃべり」「映画や音楽鑑賞」などの言葉が返ってきます。どれも有効ですが、ストレスを感じた直後にすぐにできるものではありません。しかし、「笑トレ」には一瞬でストレスを軽減できる、三つの要素が含まれています。それは、「笑い」「姿勢」「呼吸」です。

まず、人間は普通、楽しい、愉快だと感じた時に笑います。脳は、「ハハハハハ」と声を出すと、笑ったと認識します。すると脳内物質がストレスホルモンを下げ、愉快だと感じた時と同じ体の状態になります。その結果、血圧や血糖値が下がり、健康効果を得られるのです。口角を上げ、笑顔をつくるだけでも効果があるという実験結果もあります。

二つ目は、姿勢です。笑トレでは、何度も上を向いて胸を開くポーズで「イェーイ!」と声を出し、万歳のポーズをします。喜びや勝利のポーズです。人間は落ち込んでいる時や自信を失った時、うなだれて胸を閉じます。すると体内に十分な酸素が取り込めず、血液循環が悪くなり、脳や臓器に必要な血液が運ばれません。つまり、体を開く「イェーイ!」のポーズは、元気が出るポーズなのです。

即座にストレスを解消できる方法の三つ目は、呼吸です。息を吸ったり吐いたりするための筋肉は、加齢により衰えます。呼吸筋は、笑う時に使う筋肉でもあるため、笑トレでは「ハハハハ」「ホッホッ、ハハハ」と横隔膜を動かし、声を出すことで、呼吸のための筋肉をしっかり刺激し、自然に呼吸筋が鍛えられていきます。

そこで今回の動画では、呼吸筋をしっかり動かすことを意識した体操を紹介します。「ストレスのごみ箱笑い」は、日々のストレスを胸の前に腕でつくった輪(ごみ箱)の中に吐くのですが、この時、背中を丸めたまま息を吸い込むことで、胸郭を大きく膨らませるのがポイントです。「アロハ笑い」は両手を広げて上を向きながら「アーロー」と長く息を吐き、そのまま体を前に倒しながら「ハハハハハ」と一息で吐き切ることで、血液循環が良くなるのを実感できるはずです。

私たちは、心の在り方一つで、気分も体調も変わることを知っていますが、心を変えるのはとても難しいことです。しかし、体は少しの運動で変化します。心と体は密接につながっているため、体を変えると心も変化します。運動が苦手な人でも簡単にできるのが笑トレ。道具は必要なく、リフレッシュ効果もあり、一つの運動で「笑い」「姿勢」「呼吸」を改善して、ストレスが解消できるのです。そして、笑トレで体を鍛えると、心も強くなります。毎日笑って健康と幸せを手に入れましょう。

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プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫・神戸市生まれ。2009年にインドで笑いヨガを学び、帰国後に日本笑いヨガ協会を設立した。笑いは呼吸であると考え、一生「健康」と「ごきげん」を手に入れられる笑トレや笑いケアを開発し、高齢者のケア現場や企業のストレスケアの分野でも指導・講演活動を行っている。日本応用老年学会理事。著書に『ボケないための笑いヨガ』(春陽堂書店)、『大人の笑トレ』(ゴルフダイジェスト社)など。