誰も取り残されないように――バチカンによるワクチン接種政策(海外通信・バチカン支局)

バチカンのマテオ・ブルーニ報道官は3月31日、同市国内にあるローマ教皇パウロ六世ホールにつくられた新型コロナウイルスワクチンの接種会場で、100人を超える生活困窮者が接種を受けたと発表した。彼らは、マザー・テレサが創設した「神の愛の宣教者会」、聖エジディオ共同体、ローマにあるカトリック教会の救援機関「カリタス」などからも支援を受けている。

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現代を見つめて(60) “快挙”の背景 文・石井光太(作家)

“快挙”の背景

東京五輪の競泳代表に、池江璃花子さんが内定した。二〇一九年二月に白血病を告白し、一度は出場を諦めたものの、コロナ禍の中で治療と練習を積み重ね、見事に競技の場に復活を果たしたのだ。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(50) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

因果は眩ませない

禅の公案に「不落因果」という言葉が出てくる(『無門関』第二則「百丈野狐」)。ある僧が修行者から、長年修行を重ねた人でも因果律(あらゆる現象は何らかの原因から生じた結果であるという法則)にとらわれるのかと問われ、大悟した人は「不落因果(因果律の制約を受けない)」と答えたところ、その答えが誤りであったために、僧は長期間にわたって野狐(やこ)に身を堕(お)とされてしまう。その後、「不昧因果(ふまいいんが・因果律を眩=くら=ませることはできない)」と喝破した百丈禅師の言葉を聞いて大悟するという逸話である。

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唯仏与仏(74) 立正佼成会 庭野日敬開祖法話

仏さまの教えを学ぶということは、生活のなかで教えを実行することです。そして、さまざまなできごとを素直に見聞きしていくことです。すると、ラジオを聞いたりテレビを見たり、新聞や雑誌を読んだりしてふれる話題や、多くの方にお会いして聞かせてもらう話が、すべて仏さまの説法と思えてきます。

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『ミャンマー近現代史から見たクーデターの背景』 平和に向けて今、できることは 上智大学教授・根本敬氏

ミャンマー近現代の歩み

現在のミャンマーの土台ができたのは、1886年から1948年のイギリスの植民地期(1942~45年の日本統治期を除く)です。この間にビルマの王朝国家が壊される一方、イギリスの人口調査によって人々の間で民族意識がアイデンティティーとして形成されました。ビルマ民族はその中でも最大の民族となり、上座部仏教を信仰し、ビルマ語を母語とし、過去の王朝国家への愛着を持つようになりました。彼らの中から独立運動が起こり、1948年にビルマ連邦として独立しました。

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幸せをむすぶ「こども食堂」(4) 文・湯浅誠(NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)

こども食堂はみんなの居場所

地域のにぎわいをつくる「こども食堂」は、貧困家庭の子にも、「ふつう」の家庭の子にも、すべての子どもにとって意味のある場所だという話をしてきました。しかし、それだけではありません。こども食堂は大人にとっても意味のある場所です。

こども食堂なのに大人が行っていいの? と思う方もおられるかもしれませんが、全国に5000カ所あるこども食堂の8割は、誰が行ってもいい場所で、大人もたくさん参加しています。

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