気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(43) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)
ホームスクールで学ぶ息子から感じる「チャンタ(意欲)」のパワー
6歳になる息子がホームスクーリングで学び始めて、約半年が過ぎた。ホームスクールとは、両親を中心に家族のもとで学習していくスタイルだ。
もちろんタイでも、主流の学び方は学校教育だ。しかし、ホームスクーリングで「自由な学び」を選択する子供たちも一定数おり、私たち夫婦は、子供の様子や今の環境を考慮した結果、幼稚園を卒園した息子を小学校に入れず、ホームスクーリングに挑戦しようと決めたのだった。
幸運なことに、アシュラム(瞑想=めいそう=修行場)にいる私たち家族の周りには、森や池や畑など、豊かな自然がある。お坊さんたちや在家の修行者たちが修行に励み、畑で農作業をしたり、建物を造ったりもしている。つまり、その道のプロの人たちが身近にいてくれているのだ。彼らのおかげで、授業という形はとらなくても、息子は自然に彼らの仕事ぶりを目にしている。
息子は1歳ごろからよく鉛筆で丸を描いていた。それをだんだんとトラックやトラクターなどの絵に“進化”させていった。2歳ごろになると、夫が描いてあげたトラックの絵をまねするようになり、今では何十種類ものトラックを自由自在に描けるまでになった。最近では段ボールや厚紙があれば、はさみとのり、ホチキスを使って器用に車を作るようになり、家には彼の「作品」が日々増産されている。スマートフォンで見る動画もトラックがメイン。見るだけではなく、それらをまねて自分で作っている。見ては作り、作ってはまた新しい映像を見るの繰り返し。子供の作品ではあるけれども、どんどんバージョンアップしている。また、動画の影響で、「TRUCK」「TRACTOR」などと英語の文字まで書き出した。アルファベットは幼稚園で学んだが、それ以上の学びはもう、動画が先生だ。
自分の「好き」を基に、どんどん探求しているように見える息子。それだけではなく、周りのプロの仕事人たちのまねも加速している。夫は息子を連れて時々、納屋に使う小屋を造る工事の手伝いに行っているが、息子は鉄を切る道具や金づちなどの特徴を覚えている。また、畑の周りで大人が草を刈る姿を見ては、材料の余りを組み合わせて、おもちゃの草刈り機を作って遊んでいる。その観察力には驚かされる。