気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(36) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)

さらに夫は、取材でこう語った。「ここは瞑想場で気づきを高めるところでしょ? それもお金の節約と関係がありますよ」と。気づきとお金は一見すると関係ないようだが、気づきをなくしてしまうと余計な出費が増えていく。例えば、気づきを一瞬失っただけで大けがをしてしまったり、事故に遭ってしまったりする。もちろん完全に防ぐことはできないけれど、少なくとも一つ一つの行動に気づきを向ける訓練によって、必然的にヒヤリ、ハット、うっかりを最小限に抑えるだけでなく、出費を抑えることにもつながっている。

夫のホームさんと息子の3G

これは、心の面にも影響している。苦しんでいる時は、物を買ったり、嗜好(しこう)品を消費したりすることに依存してしまいがちで、それを不思議と思わなくなってしまう。心の状態に気づきを向ければ、お金を費やす自分の行動を振り返る機会が増える。そうした意味で、私たち家族は「気づきを高める節約術」を暮らしの中で実践しているとも言えるだろうか。

家族で田舎暮らしのフリーランス、そしてアシュラムという瞑想修行場での学び。これほどの幸運に恵まれていることへの感謝を忘れず、今後も気づきを高めて楽しい節約生活を続けていきたい。




プロフィル

うらさき・まさよ 翻訳家。1972年、沖縄県生まれ。東京工業大学大学院博士課程修了。大学在学中からタイ仏教や開発僧について研究し、その後、タイのチュラロンコン大学に留学した。現在はタイ東北部ナコンラーチャシーマー県にある瞑想修行場「ウィリヤダンマ・アシュラム」(旧ライトハウス)でタイ人の夫と息子の3人で生活している。note(https://note.mu/urasakimasayo)にて毎朝タイ仏教の説法を翻訳し発信している。