弱小チームから常勝軍団へ~佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」日本一3連覇の軌跡~(2) 文・相沢光一(スポーツライター)

ぶつかり合う体、繰り返す攻防

アメリカンフットボールをひと言で表すとすれば「陣取り合戦」だ。陣地の位置を示すのがボール。ボールを保持している側が攻撃権をもち、ボールを持って走ったり、味方にパスをしたりして前進を図る。そして相手側陣地の奥にあるエンドゾーンまでボールを運べばタッチダウンで得点になる(タッチダウン=6点、その後に与えられるキック・トライ・フォー・ポイント成功で+1点)。一方、守備側は相手を前進させないため壁のように立ちふさがったり、タックルしたりしてそれを食い止める。

プレーが始まると体をぶつけ合う激しい攻防が繰り広げられる

フィールドに立つのは1チーム11人ずつ計22人だ。両チームが攻撃側と守備側にはっきりと分かれ、攻守交代してゲームが進むという点では野球に似ているともいえる。野球はスリーアウトでチェンジになるが、アメリカンフットボールで与えられる攻撃権は4回(1stダウン、2ndダウン、3rdダウン、4thダウン)。この攻撃で10ヤード(約9m)、ボールを前進させることができれば、再び1stダウンからの攻撃権が与えられる。わずか10ヤードだが、総力を挙げて守る相手を突破して前進するのは難しく、場合によっては前進どころか、後退させられることもある。また、攻撃権は4回だが、4回目で10ヤード進めなければ、その地点から相手に攻撃権が移るため、4thダウンではパントキックで相手の攻撃開始位置を下げようとすることが多い。

ゲームの進行に関しては野球に似ているものの、大きな違いもある。その一つが、アメリカンフットボールでは選手交代が自由にできることだ。だから、トップレベルのチームはベンチ入りする選手も多い。日本の社会人Xリーグは65人まで選手を登録することができるし、学生(大学・高校)に至っては人数が無制限なのだ。

この選手交代自由という特性から、「攻撃専門=オフェンス」と「守備専門=ディフェンス」のふたつのチームを準備して、試合に臨むことが当たり前になった。オフェンスチームに組み込まれた選手は攻撃の、ディフェンスチームに属する選手は守備の練習を重ねて専門のスキルを身に付ける。また試合では、自軍が攻撃している時はディフェンスチーム、守備をしている時はオフェンスチームが休めるわけだ。

ところが、部員が10数名しかいないチームの選手は、攻撃の時も守備の時も出続けなければならない。両軍の陣地を示すボールが置かれるライン(スクリメージラインという)で対峙するオフェンスラインとディフェンスラインの選手たちは、クオーターバック(QB)のコールでプレーが始まった瞬間、目の前の相手とぶつかり全力で押し合わなければならない。相撲の立ち会いを繰り返しているようなものだ。また、ボールを持って走るランニングバック(RB)やパスを受けるワイドレシーバー(WR)などは全力疾走し続ける。部員数が少なく、選手が攻撃の時も守備の時も出続けなければならないチームはスタミナ切れしてしまうのだ。

東松氏は当時のロータスをこう振り返る。

「強豪を相手にしても試合の前半は対等に戦えるんです。でも、後半になるとバテて攻撃も守備もボロボロになってしまう。結局、大敗です。そんな成績では、入部希望者も現れませんよね。部員は増えず苦戦が続くわけです」

立ち上げたばかりのアメリカンフットボールクラブならどこも経験することなのかもしれないが、ロータスもこうした悪循環から抜け出せないでいた。

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