気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(27) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)

「法を人様に伝えることを通して、自分自身に法を教えていきなさい」

私が今住んでいる瞑想(めいそう)修行場「ウィリヤダンマ・アシュラム」。そこで修行するお坊さまたちを案内して、4月29日から5月8日まで来日ツアーを行った。スティサート師とサンティポン師のお二人の僧侶は、スカトー寺で出家され、長年修行を積まれている。私が尊敬するお坊さまたちである。以前から私は、ぜひお二人を日本にお連れし、瞑想会などを開催できたら、人生の悩みや苦しみに直面している方、あるいは瞑想を学んでいる日本の方のお役に立てるのではないかと感じていた。

ありがたいことに、昨年後半あたりから、そうした私の願いに協力したいという有志の方々が声を上げてくださり、今回、関西・北陸への旅が実現したのだった。同行者はタイ人・中国人も含めて総勢10人。つい先ほど、無事ツアーを終えてタイに戻ってきたばかりで、この原稿を書いている。この旅での学びが非常に多く、今回と次回の2回に分けてお伝えしたいと思う。

日本では4会場で公開イベントを行った。大阪での瞑想会、滋賀にあるタイ料理レストランでのタンブン(徳を積む)会と瞑想会、『逝き方から生き方を創るwithおぼうさん』をテーマにした兵庫・尼崎市の西正寺でのトーク&ワークショップ、石川・かほく市にある西田幾多郎記念哲学館での瞑想会だ。

いずれもとても盛況で、タイ僧侶の訪問を心から歓迎してくださった。初めてタイの僧侶を間近で見る人も少なくなかったようで、参加者との対話や質疑応答では、瞑想に関する質問だけでなく、タイのお坊さんの暮らしぶりや戒律のこと、生き方、死の看取りについてまで問われ、お二人はどんな質問にも親しげに優しい口調で答えてくださって、楽しくバラエティーに富んだ対話となった。

スティサート師やサンティポン師は、普段から瞑想指導に奔走(ほんそう)しておられる。ここアシュラムやバンコクなどでの瞑想会、中国人を対象に年数回行われる10日間の瞑想リトリート、また、瞑想修行を希望する日本人訪問者に対しても、丁寧で分かりやすく教えてくださっている。信頼できるお二人なら、まだご縁のない日本の方にも、きっと多くの学びを届けてくださるだろう、との確信が私にはあった。

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