共生へ――現代に伝える神道のこころ(4) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)
現代における「生きた神社」の存在意義
(5)のような場合は、近代以降に国家的な祭祀の観点から創建された社で、明治神宮のように全国の青年団をはじめとする多くの国民の奉仕、奉賛、献木により社の内苑、外苑が建設され、国内有数の社へと発展したケースも見られる。
(6)については、いわゆる御利益神社と称されるような社だ。御神徳にそれぞれ個別の特徴が見られ、崇敬・奉斎する人々にとっては、「お参り」や「お祀り」することで、願意や自己実現といった目的が果たされる性格が見られる社である。病気平癒や商売繁盛、厄除けなど民間信仰をもとにしたものが、制度的にも神社という形で祀られるケースもある。こうした神社の中には、近年の御朱印ブームなどもあり、その御利益が注目されている神社も多い。
(1)~(6)のように奉斎する主体に基づく分類ではなく、社会的環境に基づく分類では、氏神神社や崇敬型神社、あるいは観光型神社のような形での分類の仕方もあり、山頂や離島など地理的環境に基づく分類もあることから、先に掲げた類型に収まらない神社や複合的な性格を有する社もあると考えられる。さらには、時代の変化等で別の性格が付加されるケースもあるため、奉斎する主体や社会的環境、地理的環境等を踏まえつつ、神社を理解することが必要である。神社の所在する地域社会の在り様や状況の変化を把握しながら、現代における「生きた神社」の姿を知ることが、神社研究の上では大事であり、神社の在り方や本質をとらえる上で大事な要素であると考えている。
(写真は全て、筆者提供)
プロフィル
ふじもと・よりお 1974年、岡山県生まれ。國學院大學神道文化学部准教授。同大學大学院文学研究科神道学専攻博士課程後期修了。博士(神道学)。97年に神社本庁に奉職。皇學館大学文学部非常勤講師などを経て、2011年に國學院大學神道文化学部専任講師となり、14年より現職。主な著書に『神道と社会事業の近代史』(弘文堂)、『神社と神様がよ~くわかる本』(秀和システム)、『地域社会をつくる宗教』(編著、明石書店)、『よくわかる皇室制度』(神社新報社)、『鳥居大図鑑』(グラフィック社)、『明治維新と天皇・神社』(錦正社)など。
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