共生へ――現代に伝える神道のこころ(4) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

全国から献木された約10万本を植栽して造成された明治神宮の鎮守の杜は、「都会のオアシス」「憩いの場」としても親しまれている。2012年には、ミシュランの「日本の三つ星観光地20選」にも選ばれた

「至高神・霊威神・機能神」

「神社」をどのように理解するかという点では、むろん個々の神社の縦糸の部分にあたる歴史性への着目も大事であるが、どのように奉斎されてきたかという、横糸の部分に注目することも大事である。その点で、櫻井勝之進氏や前出の櫻井治男氏の説に基づき、奉斎する主体という観点から神社を類型化すると、以下の通りになる(前掲『神道の多面的価値』)。

一つ目は至高神である。これは三つに分類される。(1)皇祖畏敬の観点から、皇室が祀る伊勢神宮、(2)族祖敬仰(けいぎょう)の観点から、個々の氏族の祀る春日大社や日光東照宮のような社、(3)地域安泰、鎮護の観点から、地域共同体で祀る「お宮」「氏神」と呼ばれるような社だ。

次に霊威神。これは、(4)慰霊安鎮の観点から、国民、地域住民が祀る社で、天満宮や御霊神社のような社、靖國神社や護国神社、地域のために尽くした義人を祀る社が挙げられる。

もう一点は、機能神だ。これは二つに分類される。(5)国家意識高揚の観点から、国民が祀る社で、明治期に創建された橿原神宮や明治神宮、湊川神社のような社、(6)精神安定の観点から、個人や篤信の崇敬者、崇敬者団体で祀るもので、いわゆる御利益信仰で賑わう社である。

(1)については、単なる至上、至高の神ということではなく、八百万神(やおよろずのかみ)とも言われる多くの神々が存在する中で「大神(おおかみ)」として意識される神のこと。伊勢神宮の場合でいえば、皇室の祖神としてそのご神威が畏(かしこ)まれて、大和笠縫邑(やまとかさぬいのむら)から伊勢の地に奉遷された「伊勢の大神の宮」で、皇室のみならず多くの国民の奉斎が寄せられる社となっていることが挙げられる。

(2)については、例えば藤原(中臣)氏が祖先の神として春日大社に天児屋命(あめのこやねのみこと)を祀るように、個々の氏族の奉斎する氏族の祖先の神々のことで、それぞれの地縁・血縁に基づいた氏族集団にとって、極めて高い存在として崇(あが)められている。なお、個々の地域の神社が「氏神」神社、「氏神さん」として呼称されるようになったのは、近世以降のことと考えられている。

(3)は、前述した「お宮」と称されるような社。地域の守護神として崇敬される社を指す。

(4)は、奉斎の趣旨が慰霊や安鎮で、朝廷による国家的な観点から祀られた菅原道真や、国家のために出征し、亡くなられた戦没者を祀る靖國神社や護国神社、架橋や水利水防など地域のために特別な貢献を果たして亡くなられた義人を祀る社、いわゆる「人」を神として祀る社である。天満宮のように菅原道真を祀るようなケースでは、農耕の神とともに学問の神として機能神的な役割が付加されたり、ムラの氏神となって「天神さん」と呼称されるような場合には、(3)のような役割が付加されたりする場合も見られる。

【次ページ:現代における「生きた神社」の存在意義】