おもかげを探して どんど晴れ(13) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)

一つには、「名前を呼ぶのに、何の用事がありましたか」ということです。「特にない」と生徒さんたちは答えます。

「だいたい、何の用事もないのに名前を呼ぶとは何事ですか? しかも、8回も呼ぶなんて失礼ですね」。要は、モラルの問題です。生きているとか死を迎えているとか関係なく、モラルに反していますよということですよね。ムッとした花子さんが何かアクションを起こすのも無理はない。それをみんなが怪奇現象と呼ぶ。失礼千万です。「分かりましたか? では、今度もし花子さんに会ったら何と声を掛けますか?」「『お家に帰った方が良いよ!』と言います!」。「はい、よくできました!」と、私が笑顔で皆さんを褒めます。

このように学校のいのちの授業では、怪談からモラルの話につなげ、時には民俗学の中にある風習やしきたりに触れながら生きる知恵につなげることもあります。

子どもたちに、「生きている」という意識を持ってもらうことで、周りにいる大切な人の存在を意識し、大事にするようにと願って。思いやりやいたわりを養い、日々の悲嘆と向き合いながら死生観を高めてもらいたい。

死ぬために生きている人なんて、一人もいません。どのような死を迎えようと、人はみんなその時間まで生きるために生きているのです。

亡き人の本当の気持ちを探り、宝物を見つけてほしい。死を迎えた方がどのように何を大切に生きてきたのかを知り、亡き人と過ごした大切な時間を糧に、力強く生きてもらいたい。そのような思いを抱き、亡き人の立場に立って生徒さん方と談ずる時間が、私のいのちの授業の特徴です。

※タイトルにある「どんど晴れ」とは、どんなに空に暗雲が立ち込めても、そこには必ず一筋の光がさし、その光が少しずつ広がって、やがて真っ青な晴天になるんだよ、という意味です

プロフィル

ささはら・るいこ 1972年、北海道生まれ。株式会社「桜」代表取締役。これまでに復元納棺師として多くの人々を見送ってきた。全国で「いのちの授業」や技術講習会の講師としても活躍中。「シチズン・オブ・ザ・イヤー」、社会貢献支援財団社会貢献賞などを受賞。著書に『おもかげ復元師』『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)など。