幸せのヒントがここに――仏典の中の女性たち(4) 文・画 天野和公(みんなの寺副住職)

画・天野和公

無常を観た王妃 ケーマー

唐突ですが、私は歯医者さんに行くのがあまり好きではありません。検診に行くたびに、やれ噛み合わせによる摩耗だの歯茎の後退だの、悪い点ばかり指摘されて気分が滅入るからです。

「変わらずにいたい」と願っても、見た目にも内面にも日々着々と表れる、加齢のサイン。見て見ぬふりをしたくなるのが人情ですが、私にとって、否が応にも自分の老いを実感させられるところが歯医者さんというわけです。

変化するという性質は私たちが等しく持つものですが、そのサインをどう受けとめるのか、そこから何を感じるのかは人によって大きな違いがあります。

仏典に登場する二人の例をご紹介しましょう。

一人はマカーデーヴァ王。お釈迦さまの過去世の姿です。健康に恵まれ長く国を統治していた王は、自分の理髪師にこう言い聞かせていました。「もし私の頭に白髪を見つけたら、必ず教えるように」。

年月が経ったある日、ついに理髪師は王の頭に一本の白髪を見つけました。「王さま、白髪がありました」。白髪はたったの一本です。実際に、彼にはまだまだ長い寿命が残っていました、しかし確実に老いと死が迫っていることを知り、王は激しい恐怖に陥りました。「私は何て愚かなのだろう。このように白髪が生えるまで、煩悩を断とうとしなかったとは」。

王はその日のうちに息子に王位を譲り、出家しました。自分に訪れた白髪という老いの兆候を「出家を促す天の使いが現れた」と詩に詠みました。