法華経のこころ(10)

人間の生き方の究極の境地が示された法華三部経――。経典に記された一節を挙げ、記者の心に思い浮かんだ自らの体験、気づき、また社会事象などを紹介する。今回は、「無量義経徳行品」と「譬諭品」から。

能(よ)く諸(もろもろ)の勤め難きを勤めたまえるに帰依(きえ)したてまつる(無量義経徳行品)

「仏さまの、すべてを成就された相(すがた)だけを賛歎(さんたん)するのでなく、その境地に達せられるまでの努力に、心から帰依申し上げます」。“結果”だけにとらわれがちな私たちに、それまでの“経過”が、いかに大切かを教えてくれる一節。

4月、さまざまな人々が新しい人生のスタートをきった。入学、就職……新品の制服やスーツに身を包んだ若者は、街中でも、ひときわ輝いて見える。あれもしよう、これもしよう、という意欲と期待の大きさが、こちらにも伝わってくるようだ。

だが、一方で、新しい生活には、不安がつきもの。中には、入学や入社早々にして、挫折感を味わう人も少なくない。

確かに現実は、私たちの予想以上に厳しいかもしれない。評価、人間関係など、カベにぶつかることもあるだろう。しかし、それは、すべて、“当たり前の修行”と受けとめたい。一歩一歩、地道に努力し続ける――結果は二の次とまで言わないが、真剣に努力している姿ほど、人をひきつけ、自らの糧となるものはない。

「能く諸の勤め難きを勤めたまえるに帰依したてまつる」。この一節を、新しい人生を歩み始めたすべての人に贈りたい。
(J)

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