男たちの介護――(6) 藤堂靖之さんの体験を読んで 津止正敏・立命館大学教授

つらさを共有することの大切さ 一人で抱え込まないで

これまで2週にわたり藤堂靖之さん(69)=仮名=の介護体験をリポートした。長年、母・智代さん=仮名=の介護にあたった藤堂さんの体験を、立命館大学の津止正敏教授(社会学)に振り返ってもらった。

介護でつらい思いをするのは男女とも同じですが、介護の現場では男性特有の悩みや苦労というものがあります。例えば、これまで仕事一筋に生きてきたような男性の多くは、どんな理不尽なことがあっても、決して「逃げ出さない」「愚痴をこぼさない」ことが男の証しといったような部分があります。ですから、排泄(はいせつ)や入浴の介助はもちろん、慣れない洗濯や掃除、料理、買い物といった家事全般に至るまで、弱音なんて吐かずに奮闘しているのが現実です。

愛する家族のためとはいえ、介護は思うようにいかないことの連続です。しかも、今の日本の社会では在宅介護は無償の営みと考えられがちで、どれほど大変なものなのか理解されることはありません。ビジネスのように目標や達成感を数値化できるわけでもなければ、効率的に進めていくこともできません。コツコツと努力しても必ずしも思うような成果が得られないのです。そうすると、介護者は自分を納得させるものを探そうとするのです。

藤堂さんのケースもそうでした。母親の面倒を誰が見るのか。母にとって頼れるのは私しかいないはずだ。その思いがモチベーションとなって母親の介護に取り組んできました。