鼎談・世界の子どもたちの未来を考える 後編

庭野光祥次代会長(左)と篭嶋氏

『母として、世界の子どもたちの未来を考える』をテーマに、日本ユニセフ協会(以下、ユニセフ)と立正佼成会がパートナーシップを結び40年目を記念した鼎談(ていだん)が6月5日、法輪閣で行われた(前編はこちら)。出席者は、ユニセフ・グアテマラ事務所の篭嶋真理子副代表(2018年8月より、ジャマイカ事務所代表)、庭野光祥次代会長、習学部・青年ネットワークグループの木原沙友里スタッフ。子どもを育てながら、それぞれの分野で活躍する3人が、わが子との触れ合いを通して感じた世界とのつながりを紹介しながら、国の垣根を越え、誰もができる身近な支援について語り合った。(文中敬称略)

世界と自分のつながりを感じ

庭野 海外と日本では、生活環境が異なるので、子育ての体験は全て同じではなくても、根底では母親同士、分かり合えることが多くありますよね。

篭嶋 そうですね。4年前から、完全母乳育児の推進のほかにも、立正佼成会の皆さまの支援で、幼い子どものリズム遊びや工作などを通じて、五感の発達を促す「乳幼児期の子どもの発達(ECD)」センターをグアテマラに開設しました。保健省の職員や地域のリーダーが講師を務める講座には、乳幼児を連れた親たちが集まってきます。

先住民のお母さんたちは、子どもに歌を歌ってあげたり、あやしたりする積極的な触れ合いが少ない傾向にあります。

グアテマラでは、子どもの生存、発達を支援する事業を実施

こうした習慣を改善するために講座では、子どもたちへの接し方を丁寧に分かりやすく伝えます。参加していたおじいちゃんが、ハッとして「自分の子どもは殴って育ててきた。でも自分の孫たちには、絶対に正しい触れ合い方をしたいんだ。もう、同じ間違いはしないよ」と話してくれました。とても印象的な出会いでした。センターは3カ所からスタートし、現在、25カ所で講座を開いています。

庭野 佼成会の中のことですが、今、南アジア地域の教会でも家庭教育が非常に必要とされ、関心が高まっています。ECDセンターと同じように、父親や母親が子どもとどう接すればいいのか、もっといい触れ合い方はないのかと考える親御さんが大勢います。

日本でも、子育てに関する情報があふれているにもかかわらず、幼い子どもを虐待してしまう親御さんも少なくありません。子育ての基本が、崩れてきているのかもしれませんね。

篭嶋 貧困や格差などいろいろな状況が重なり合い、追い詰められてしまった人が虐待などをしてしまうケースもあるでしょう。親たちを受けとめるセーフティーネットが確立されていれば、悲しい事件なども減少するのではないかと思います。

子どもの育て方だけでなく、グアテマラでは、障害のある子どもたちに関する社会保障制度が整備されていません。国が国民の最低限の文化的生活を保障する政策の重要性を感じています。

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