開会式での光祥次代会長のスピーチ 国際ムスリム共同体会議から

モーゼは十戒で「殺すなかれ」とし、預言者ムハンマドもブッダも欲望の制御を説きます。あらゆる宗教は不殺生を説き続けています。放っておけば暴力や欲望を増大させてしまう可能性のある弱い存在だからこそ、いつの世も欲望のコントロールこそが私たちの取り組むべき課題だといえます。

人類は、何千年もの時間をかけて、暴力によって問題の決着をつけるという習性を身につけました。それを変えるには大変な努力が必要です。ですから人間の欲望をどう制御していくのか。それが宗教者に問われていて、ひいてはそれが少数派の保護にもつながっていくのではないでしょうか。

私たちはまず、自分の中に潜んでいる暴力と向き合い、その上で、神仏の願われる善き心、寛容の心を自らの中に育てていく。そして、暴力によって自らの主張を訴えている人々を、単に否定し、排除するだけでなく、彼らをどうやって本来の神仏の教えに導き、皆共にこの地球で生きていくにはどうすればいいのかを考えることが大事なのではないかと思います。

私は現在、サウジアラビアのアブドッラー前国王のイニシアチブで始まったKAICIID(アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター)の理事や、世界宗教者平和会議の国際共同議長などさまざまな諸宗教対話の場に参加していますが、その中で大切なことは、私が仏教徒として仏教徒を助け、仏教の教えを証明することではなく、それ以上に異なる宗教を信じる人々をこそ助け、証明することが大切な役割だと信じています。

今回この会議に参加させて頂いたことで、今後はこれまで以上に、日本の社会の中で少数派として生きているムスリムの友人たちを助け、イスラームを証明し、彼らと「共にある」ことの豊かさを大切にしていきたいと願っております。

世界は多様です。多様性は豊かさでもあると同時に、私たちに困難も与えます。この多様な世界の中で、私たちは多様性に耐えて生きていかなければなりません。多様な人々が、このたった一つの地球の上で、平和のうちに生きていける世界を築かなければなりません。そのために微力ながら私は、他者のために何ができるのかを自らに問いつつ、これからも行動していきたいと思っています。

(文責在編集部)

国際ムスリム共同体会議での光祥次代会長のスピーチ映像
「スピーチドキュメント 平和への声」(立正佼成会ウェブサイト)

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