米国は移民によって形成された――教皇が米国建国250周年に際してスピーチ(海外通信・バチカン支局)

教皇レオ14世、米国憲法センターの「自由のメダル」授与式典の中継で
米国の建国精神を謳(うた)った憲法に関する教育や研究を促進する目的で2003年に設立された「米国憲法センター」(民間非営利団体)は7月3日、米国建国250周年記念日の前夜(ローマ時間)に、1790年から1800年にかけて米国の首都であったフィラデルフィアにある同センターとバチカンをインターネットでつなぎ、米国人教皇であるレオ14世に対する「自由のメダル」の授与式典を挙行した。
「自由のメダル」は、1987年の米国憲法制定200周年を記念して創設され、2006年から同センターに委譲された。「世界の人々に神からの祝福である自由を保障・促進した個人、団体」に毎年、授与される。今年で38回目を迎え、過去には、ダライ・ラマ14世、モハメド・アリ、ミハイル・ゴルバチョフ、ヒラリー・クリントン、ウォロドミル・ゼレンスキー、マララ・ユスフザイなどに贈られてきた。
同センターは、教皇へのメダル授与の理由として、「レオ14世は、バチカンの公式声明文やスピーチを通して、米国憲法修正第1条で保障されている原則である、信教の自由、思想の自由、表現の自由なくして平和は存在しないと主張し続けてきた」ことを挙げた。また、教皇は昨年5月に選出されて以来、「諸宗教間、諸教会間対話を自身の教皇職を特徴付ける優先課題として掲げ、ユダヤ教、キリスト教、イスラームや他の諸宗教指導者たちとの対話に尽力してきた」とも明かしている。「史上初の米国人教皇」としてレオ14世は、「民主主義の理想と、生涯を通した諸宗教対話の促進に向けた努力によって形成される、顕著なる展望を提示していった」のだ。
オンラインで授与式典に参加した教皇は、スピーチの中で米国民に対して、「神によって神のイメージとして創造された人間という聖書のビジョン」が「人間の尊厳性の根幹」であり、「人間の尊厳性の尊重は、国家創設以前から存在する原則であると同時に、国家創設の目的でもある」と主張した。自由を米国の代名詞とした建国者たちの崇高なビジョンにも言及し、それを実現するために、「米国が、その後の移民の波に門戸を開放し、彼らと彼らの子どもたちが米国の未来の形成に貢献することを可能とした」と指摘した。この発言は、米国が移民によってつくられたとも受け取れる。
さらに、米国の建国者たちが、「最初の権利」として主張したのは「生命への権利」であったと明示。「国家の道徳的保障は、全ての生命、特に、最も傷つきやすい人々、社会的存在価値が疑問視されている人々(移民をも含む)の生命を慈しむところにある」と呼びかけた。米国人教皇のイメージする「母国」は、移民を大量送還する自国第一主義の「米国」とは、ほど遠いようだ。
また教皇は、「内的確信を聖なるものとする自由」についても訴えた。「米国における信教の自由が、共通善の促進に向けて、諸宗教対話と諸宗教間協力を可能とした米国の伝統を盛り上げ、国家が対処を迫られその歴史を形成していった、道徳的、倫理的諸問題に関する対話をより豊かなものにしてきた」と分析した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)





