緊迫する北朝鮮情勢と核兵器禁止条約を考えるシンポジウム ピースデポ主催

次いで『北朝鮮の核・ミサイル開発と文在寅政権』と題して講演した徐氏は、北朝鮮が朝鮮半島全体、グアム、沖縄、ハワイの米軍基地を攻撃する能力を持ち合わせているとの報道により、韓国では核を保有し、米国からの「核の持ち込み」を肯定する世論の高まりに危機感を覚えると述べた。

また、朝鮮半島の安定化に向けた6カ国協議に対し、「以前は肯定的だったが、北朝鮮への経済協力として原子力発電所の建設が盛り込まれていることを理由に難色を示す声が高まっている」との世論の動向を詳述。背景に、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所のような事故が起きるのではないかとの不安があると解説した。さらに、韓国キリスト教協議会(NCCK)の平和活動について言及。北朝鮮の朝鮮基督教徒連盟との対話や、恒久的な和平に向けた条約案の策定、韓国政府への働き掛けなどを示し、宗教者が平和活動の先頭に立って取り組む重要性を強調した。

この後、阿部知子・衆議院議員(核軍縮・不拡散議員連盟)、大西英玄・音羽山清水寺執事補(WCRP/RfP核兵器禁止条約タスクフォースメンバー)に、講演者2人を加えてパネル討議が実施された。

阿部氏は、核兵器禁止条約について「この枠組みに日本が加わらないことは非常に残念」とした上で、核兵器の非人道性を広く訴え、日本が核なき世界の実現に向けて一層取り組むよう、あらゆる方法で政府に働き掛けていく意向を示した。大西師は、仏教者の立場から、平和を実現するために「利他」の精神を出会う人と育み、多くの人に理性と忍耐を持つ大切さを説いていくことが自らの役割と詳述。また、核廃絶に向けたWCRP/RfP日本委の「ヒバクシャ国際署名」の取り組みをはじめ、諸宗教者のネットワークを通じた平和活動、啓発活動を紹介した。

メモ:「非核兵器地帯」

地帯内の国による核兵器の生産、取得、保有および管理を禁止する一方、核不拡散条約(NPT)が定める核兵器国(米国、ロシア、英国、フランス、中国)には、地帯内への核兵器による攻撃や威嚇の禁止を条約や議定書で定めるもの。現在、ラテンアメリカ・カリブ海諸国、南太平洋、東南アジア、アフリカ、中央アジアの五つの非核兵器地帯が存在する。

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