TKWO――音楽とともにある人生♪ トランペット・河原史弥さん Vol.2

演奏前はいつも通りに

――先輩を見ていて、まねているのはどんなことですか?

演奏技術です。いつも見て、聴いて、勉強になるので目を光らせていますね。それはトランペットセクションに限らず、他の楽器の諸先輩方に対してもです。

本番前のルーティンも、人によって違うので、それを観察し、まねることもありました。演奏会では、会場に着くとゲネプロ(演奏の最終確認)を行って、その後に衣装に着替えますが、佼成ウインドの楽団員は、本番より相当早い時間に着替えるんですよ。すでに、この連載企画のインタビューで、トランペット奏者の奥山泰三さんが話したことですが、先輩は1時間前には着替えています。

僕も最初は見よう見まねでしたから、先輩方に倣って本番のかなり前に着替えていたのですが、早めに着替えると、楽器を吹くスイッチが入るみたいで、つい練習してしまって、本番までに疲れてしまうんです。それで僕には合わないなと思って、本番直前に着替えるようになりました。多くの先輩方は着替えていますが、僕はスマホで漫画を読みながら、体力を温存して過ごしています。

――河原さんが在学時の洗足学園音楽大学による「展覧会の絵」(M・ムソルグスキー作曲)の演奏の映像をインターネットで視聴しました。河原さんが、演奏冒頭のソロを担当していますね。この曲のようにトランペットは観客の目を引くソロが多いと思いますが、どういう気持ちで臨むのですか?

緊張は必ずします。本番で緊張しないための対処法はないと僕は思っているので、最初から、緊張するものとして、その時にどうすればより良い演奏ができるのかを考えています。ステージに上がって、指揮者がいて、お客さんが席に座っていて、「さあ、始まります」という瞬間を想像するだけで緊張します。一人で練習する時には、それを頭の中で描き、本番を想定して吹いています。

緊張状態の時に、自分は何を考え、どう感じてしまうのかを知り、その上で、このフレーズをどう吹いたらいいのかを思い描くのです。緊張状態では、余裕をなくしてテンポを速めてしまうことや、簡単なミスをしてしまうことが起こりがちですから、日頃の練習から緊張状態をイメージして、慣れておくのです。

“緊張しないように”と考えて、それに固執してしまうと、僕はどんどん力みが出て身動きがとれなくなってしまう感じがするんですね。ですから、本番の緊張状態を想定して臨む――そんなイメージトレーニングを大事にしています。

――演奏会を控えている時、リラックス方法はありますか?

数日後に本番を控えて、胃がキリキリするような時ですよね? 特別なことはありません。趣味は漫画を読むことなので、いつも通り、漫画を読んでいますね。

少女漫画は読みませんが、それ以外はよく読んでいて、ジャンルは広い方だと思います。最近はスマホアプリでさまざまな漫画を読むことができるので、流行のものから古いものまで、料理、野球、サッカー、相撲、バーテンダーを扱ったものやSFなど、自分が興味を持ったものは何でも読みます。もちろん、『のだめカンタービレ』をはじめとした音楽系も読んでいます。

あとは、気心の知れた仲間と食事に行くことがリラックスにつながりますね。

プロフィル

かわはら・ふみや 1993年、東京・板橋区生まれ。2016年に洗足学園音楽大学を首席で卒業。優秀賞に選ばれた。同年に、TKWOに入団。第87回日本音楽コンクールトランペット部門3位、第36回日本管打楽器コンクールトランペット部門2位に入賞した。