TKWO――音楽とともにある人生♪ トランペット・河原史弥さん Vol.1

日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。また長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っていることから、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。33人目の登場となる今回は、トランペット奏者の河原史弥さん。トランペットを始めるきっかけや、音楽大学への進学を決めた当時の思いを聞いた。

輝いて見えた姿を目指して

――トランペットへの思いは、いつ芽生えたのですか?

僕が通っていた小学校では、毎年の運動会で6年生が鼓笛隊を組んで、マーチングを行っていました。小学1年生の時に初めて目にし、鼓笛隊の列の先頭でトランペットを吹いている上級生の姿がとても輝いて見えました。自分も6年生になったら、トランペットを吹きたいと、その時に思いました。

5年生になると、来年に備えて鼓笛隊のオーディションが行われました。鼓笛隊では、大半がリコーダーの担当になり、そのほかに人数は少ないですが、カラーガード、トロンボーンや打楽器といった担当があり、それぞれオーディションで選ばれます。もちろん、その中にトランペットもありました。

オーディションは、まず基本のリコーダーができていないと通過できません。鼓笛隊に入り、どうしてもトランペットを担当したかったので、運動会の演奏曲をリコーダーで完璧に吹けるように練習しました。第一次審査を通過して、ようやく自分が担当したい楽器のオーディションを受けることができるのですが、次のオーディションまでには、ちゃんと練習期間が設けてありました。皆、リコーダー以外は未経験者ですからね。一次通過者の中で、トランペットを希望している人には、練習用のマウスピースを貸してもらえました。楽器は数に限りがあり、受験希望者十数人が休み時間に交代で練習するのです。

僕は、ここでも一生懸命に練習しました。そのかいあって無事合格し、憧れのトランペット奏者の座に就きました。

――目標に向かって一直線だったわけですね。それで、さらに音楽が楽しくなっていったのですか?

中学校でもトランペットを続け、それもできるだけ上達したくて、吹奏楽部の強豪といわれていた私立の学校を受験しました。父や親戚もその中学校の出身者で、父から勧められたからです。

進学したその学校は中高一貫校で、部活も高校生と一緒でした。数多くの先輩と同じ空間で演奏できるのは、とても刺激的で、勉強になりました。コンクールも、中学生の部門に高校生は出場できませんが、高校生の部門には中学生が出場することができるので、早い時期から高校生と同じ舞台に立って演奏できたことは、とても貴重な経験でしたね。

高校生と一緒ですから、大学進学についても知ることができたんです。中学2年生の時に、高校2年生の同じセクションの先輩が音大(音楽大学)への進学を目指していました。受験の話を先輩から聞き、音大で学ぶという道があるのだと、その時に初めて知りました。それから、先輩が一生懸命に音楽の勉強をしている姿を見て、「格好いい」と思い、先輩をまねて、演奏などで必要な、音楽の基礎的な理論や知識をまとめた『楽典』を勉強し始めました。

僕が音大への志望を決めたのは、高校1年生の冬ごろですね。2年生では文系と理系に分かれるので、進学はどうするかを考え、音大に行く気持ちが固まりました。

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