弱小チームから常勝軍団へ~佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」クリスマスボウル3連覇の軌跡~(10)最終回 文・相沢光一(スポーツライター)

バトンは次の世代へ

クリスマスボウルの翌日、引退する3年生は部室を清掃し、次の代にバトンを渡した。3年生は、日々仲間と汗を流し、語り合ってきた部室に別れを告げ、グラウンドを去っていった。

準優勝のトロフィーと共に、グラウンドでの最後の1枚は笑顔で飾った

2年生・1年生部員にも敗戦に落ち込んでいる暇などない。新チームは、その翌日には練習を再開。年末年始の休みをはさみ、1月5日には気分も新たに新チームがスタートした。

ここで部員一人ひとりが行ったのが、今後に対する決意表明だ。

今年は最上級生としてチームを引っ張る立場になる2年生からは、クリスマスボウルで負けた悔しさを語る者が多かった。

「自分にもチームにも課題はたくさんありますが、これからの1年間で、日本一を争える力をつけたいと思っています」といった発言が続いた。1年生からは「試合に出場して、チームの勝利に貢献したい」「体重をあと10キロ増やしたい」という個人的な目標を語る者が多かった。

心機一転、今後の抱負を胸に再スタートきるロータスの選手たち

この決意表明はビデオ録画され、部員たちはいつでもチェックできるようになっている。1年は短いようで長い。練習を積み重ねても伸び悩むことや気持ちが停滞することがある。そんな時、新年の決意表明を見て、新チームがスタートした時の気持ちに立ち還ろうというわけだ。

全員の決意表明が終わった後、小林監督は「今年のクリスマスボウルは12月26日に行われます。覚えておいてほしい」と語った。強い言葉を発することはない。部員たちに目標の日を意識させ、そこまで自分は何をすべきかを考えて、努力してほしいということだ。

「今季も厳しい戦いになると思います。関東でも有力校は力をつけていますし、打倒佼成学園を掲げて練習を重ね、チーム力を高めてくるでしょう。また、クリスマスボウルでは関西の底力を改めて感じました。でも、今のポジションにいる限り、王座奪回を目標にしないわけにはいきません。12月26日まで勝ち残れるチームを、なんとかつくり上げたいと思っています」

ただし、今季はロータスの指導に加え、小林監督は別の重責を担うことになっている。7月にアメリカで行われるU-19アメリカンフットボール世界選手権に出場する日本代表チームの監督に就任したのだ。代表の指導のため、月に4日はロータスを離れなければならないし、当然のことながら、7月の大会期間中はロータスの指導はできない。

「代表監督を務めるのは私にとって、一つの挑戦です。日本の高校アメリカンフットボールのレベルを上げるには、世界と戦う経験は必要不可欠です。その役割を託された以上、好結果を残すために全力を尽くそうと思っています。そんな私を刺激として、部員各自が挑戦を続けてほしいという思いもあります。ロータスを留守にする時は、今まで通り信頼を置くコーチがチームを見てくれますので、心配はしていません」

ロータスの部員を指導し、屈指の強豪に育てあげたコーチ陣と小林監督(右から3人目)

また、これと並行して小林監督にはもう一つ重要な仕事がある。2年生の進路指導だ。
ロータスの部員の多くは大学でもフットボールを続けたいと思っている。活躍が目立った選手には有力大学からリクルーティングされるし、そこから外れた選手は夏に行われる大学のセレクションを受けることになる。ここで重要になるのが、選手の性格やプレーの特性が進もうとしている大学のフットボール部に合っているかだ。小林監督は各大学の情報を持っているし、専門家の目でその方向性を見てもいる。部員と面談を行い、その希望と擦り合わせながら進路先をアドバイスするのだ。

また、フットボールを続けない部員にとっても、大学選びは言うまでもなく人生の方向性に影響を与える重大事。推薦入試や受験についても、多くの情報を提示しながら親身に相談に乗る。縁あって自分の元に集まった部員たち。フットボールを続けるなら行った先で活躍してもらいたいし、その後もより良い人生を歩んでほしいという思いが小林監督にはあるのだ。

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