TKWO――音楽とともにある人生♪ パーカッション・渡辺壮さん Vol.1
日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。また長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っていることから、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。今回登場するのは、打楽器奏者の渡辺壮さん。パーカッションパートで担当している楽器や、演奏で意識していることなどを聞いた。
アンサンブルの中で担うパーカッションの役割
――渡辺さんはパーカッションパートでどのような楽器を担当されていますか?
パーカッションの楽器は、グロッケンシュピール、シロフォン、ヴィブラフォンなどの「鍵盤打楽器」、小太鼓、トライアングル、タンバリンなどの「小物打楽器」、大太鼓、シンバル、銅鑼(どら)などの「大物打楽器」に分けられます。佼成ウインドのパーカッションパートでは、鍵盤打楽器を主に和田光世さん、小物打楽器やドラムセットを主に秋田孝訓さん、大物打楽器全般を主に私が担当しています。ただし、曲によってさまざまな楽器編成があるので、私が大太鼓を担当しながら、トライアングルやタンバリンなど、複数の楽器を掛け持つこともよくあります。
――演奏で意識していることは?
大太鼓は、低い音域のバスパートのサウンドに関わる役割があります。テューバやコントラバス、バスクラリネットやファゴットといった木管低音群などが刻む低音のリズムや、それらが奏でるハーモニーに合わせることが多いですね。その際、リズムを例にとると、他の楽器には音階がありますから、音が並ぶとそこには流れや抑揚が生まれます。一方、大太鼓に音階はありません。ですので、他のバスパートがどのように曲を表現しようとしているのかを感じ取り、融合できるように心がけています。心地よいアンサンブル(合奏)をつくり上げるために、私自身はバスパートの“支え役”を意識して演奏しています。
打楽器というと、楽団のサウンドをリズムで引っ張っていくようなイメージを持つ方も少なくないと思います。実際、同じパーカッションでも、主に小太鼓を演奏する秋田孝訓さんは、自らのリズムやノリで楽団のサウンドをリードする役割を求められることが多いんです。ところが大太鼓は、演奏の主導権を握るというよりも、バスパートのサウンドを形作るために、支える役割が大半なのです。
時には、大太鼓がノリをつくったり、リズムを引っ張ったりすることもあります。多くの楽器がそれぞれ違った複雑なリズムを奏でている場面では、彼らが依りどころにするリズムをつくり、全体の演奏が安定するように演奏する時もありますね。練習で雰囲気を感じ取り、しっかりとリズムを刻むことに集中し、他の楽器の演奏をアシストします。どちらの場面でも、裏方に徹するという意識は共通していると思います。
実際に目で見たり、雰囲気を感じ取ったりすることが、アンサンブル(合奏)をつくり上げるためには欠かせません。リハーサルでも本番でも、演奏する時は他の楽器の動きに注目しています。パーカッションの位置は、ステージの最後方なので、遠くにいる他の楽器の音を聴いて合わせようとすると、距離が遠い分、どうしてもタイミングが遅れてしまうのです。例えばコントラバスは、ピチカート(指で弦を弾いて鳴らす奏法)や弓を引く動作があるので、離れていても目で見てタイミングを感じ取ることができます。初めて演奏するような会場や、響きが独特なホールでは、特にコントラバスの前田芳彰さんの動きをよく見たり、バスパート全体の雰囲気を感じ取ったりするよう心がけています。