男たちの介護――(10) 変わりゆく父 激動の中での決断

症状は日を追って悪くなった。診断の結果、アルツハイマー型と脳血管性認知症を含む混合型認知症だった。昌平さんを悩ませたのは、父親の認知症もさることながら、献身的に舅(しゅうと)の介護に当たってきた妻が過労とストレスから体調を崩し、緊急入院したことだった。

「妻はこれまで愚痴一つ言わずに父の面倒を見てきました。10年間寝たきりだった母を看取(みと)ったのも妻なんです。ところが、突然『もう限界です』と、入院することになってしまって……。妻のつらい気持ちに少しも気づいてあげられない冷たい自分でした」と振り返る。

知則さんは、排泄(はいせつ)の介助にも激しく抵抗するようになった。ベッドの上で紙おむつを交換しようとすると、手をつねったり、足を蹴ったりして抵抗し、「おまえは意地悪だ!」と責め立てる。激しく抵抗する知則さんを、昌平さんはただ黙って受けとめるしかなかった。腕や足に絶えず大きなあざができた。「いくら身内とはいえ、いきなり衣服を脱がされ、体を触られる行為に違和感を覚えていたのでしょう。心のブレーキが利かないので、いったん暴れ出すと抑えるのは大変でした」と昌平さんは言う。本人の好きなようにさせれば怒ることはないが、入浴や排泄の場合はそうも言ってはいられない。

〈どうすれば怒らせず、スムーズに介助ができるのか……〉。知則さんから片時も目を離すことができなくなった。突然暴れる認知症の父への対応、疲労困憊(こんぱい)で心に傷を負った妻の入院……。施設に預けるべきかどうか頭を悩ませたが、〈やっぱりそれはできない。父は最期まで私が看よう〉と心に決めた。

(つづく)

※記事中の人物は、仮名です