ちょっと軽く、ストレッチしてみましょう(9.冷え症) 加瀬剛(スポーツトレーナー、佼成学園高アメフット部ヘッドトレーナー)

女性は男性に比べると皮下脂肪が多く、筋肉量が少ないのが一般的です。

脂肪は筋肉と違って熱を通しにくいため、いったん冷えるとなかなか温まりにくい、という性質があります。これに対し、筋肉は熱を作り出すのですが、先に述べたように女性は筋肉が少ないため、皮膚の表面温度が低くなりがちです。これが女性に「冷え症」が多い理由の一つです。

また、末梢(まっしょう)血管の血行障害が原因で「冷え症」が起こることもあります。女性の高齢者では動脈硬化が原因で血行が悪くなるのですが、このとき、冷えは体全体で感じるよりも前腕から手先、下腿(かたい)から足先にかけての部位で感じることが多く、末端にいくほど強く感じます。

男性でも「冷え症」に悩んでいる方がいらっしゃいますが、男性の場合は生活習慣病からくる動脈硬化や、筋肉の衰えなどが原因で発症することが多いようです。

さらに、人間は恒常性といって、環境の変化に応じて常に体の“中心部(大切な臓器)”を一定温度(37度前後)に保つように、体温調節をしています。

そのため、暑いときは手足の指や皮膚表面近くにある血管(毛細血管)を拡張させ、血液の流れる量を増やすことで体外に熱を逃がそうとします。それでも足りなければ、汗によって熱を逃がします。

一方、寒いときは血管を収縮させて熱の放出を防ぎ、心臓や肝臓などの重要な臓器が集まる体の中心部に血液を集め、体温を維持しようとします。それで血液が行きにくくなった手先や足先の温度が下がり、冷えを感じることになるのです。

【次ページ:「冷え症」の対策】