ちょっと軽く、ストレッチしてみましょう(4.ふくらはぎのつり) 加瀬剛(スポーツトレーナー、佼成学園高アメフット部ヘッドトレーナー)

後脛骨筋が炎症を起こす理由

いすに座った状態で、足を上げて真っすぐつま先を伸ばしてみてください。この状態を足関節の「底屈(ていくつ)」と言います。逆につま先を脛の方に向けてみてください。これを足関節の「背屈(はいくつ)」と言います。

足首の角度が90度よりも大きく(底屈)させるとふくらはぎが縮む感覚があるでしょう。反対に90度より小さく(背屈)なると今度はふくらはぎが伸びる感覚があるはずです。

後脛骨筋は底屈させると縮み、背屈させると伸びます。この運動を「足関節の底背屈運動(ていはいくつうんどう)」と言いますが、この運動を繰り返したり、持続的に背屈したり(後脛骨筋を伸ばし続ける)すると後脛骨筋は炎症を起こしてしまうのです。

運動では相当量の底背屈運動をするので、歩き過ぎなどで足をつるのは、何となく理解できていたと思います。しかし、立ち仕事やデスクワークなどでは足首が90度近く、すなわち背屈状態になっているわけですから、知らずしらずのうちにゆっくり後脛骨筋を伸ばし続けることになっています。長時間いすに座っていたり、車の長距離運転時も同じです。高齢者や、普段全く運動していない人がふくらはぎをつってしまうのもこれが原因なのです。


炎症を起こした筋肉が縮みにくくなることは、これまでの連載でも説明させて頂いています。その縮みにくくなった筋肉を無理やり縮めようとすると、収縮する筋肉の組織が激しい痛みを伴って固まってしまう。この状態が「ふくらはぎのつり」、または「こむら返り」なのです。

「つりそうな感じがする」という時、皆さんは“無意識”につま先を伸ばす動作(底屈)をしていませんか。しかし、そうすると逆効果。後脛骨筋を無理に収縮させようとするので一気につってしまいます。

また、ふくらはぎがつった時にストレッチをして伸ばしますが、これはすでに伸ばされている後脛骨筋をさらに伸ばそうとしているわけです。症状は一時的に良くなった感じはしますが、実は症状はさらに悪化してしまいます。

では、ふくらはぎのつりの予防法と対処法を説明します。

【次ページ:予防とつった時の対処】