笑トレで元気に――健康と幸せを呼ぶ“心の筋トレ”(2) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子 (動画あり)

イラスト/中村晃子

赤ちゃんが、ニコッと笑う。それだけで、周りの人を幸せにします。自分の子はもちろん、知らない赤ちゃんでさえ、自分の顔を見てニコニコしてくれると、何の下心もない無心の“笑い”にとろけるような幸せを感じ、つられて笑顔になります。人間は、生まれた時から他の人を幸せにする力があるのです。

赤ちゃんや、まだ言語能力が発達していない幼児は、冗談やユーモアを理解して笑うわけではありません。笑うと気分が良くなることを本能的に知っているのです。また、他の哺乳類は生まれてすぐに立ったり動いたりできますが、人間は乳幼児期が長く、誰かに世話をしてもらわないと、生きていけません。だから、“お世話”という社会的報酬を得るために笑うという説もあります。

よく笑い、ごきげんでニコニコしている赤ちゃんと、泣いてばかりで、常にきげんが悪い赤ちゃんでは、周りの大人たちはどうしてもごきげんな方の赤ちゃんに関わることが多くなります。スキンシップや変顔、「いないいないばあ」といった刺激や触れ合いが、赤ちゃんの脳の発達にも関係してくるのだそうです。

赤ちゃんに限らず大人も、いつもごきげんで楽しそうにしている人の方が、人間関係も仕事もうまくいくことが多いです。老人ホームで人気が高い人は、いつもニコニコごきげんで、体重が軽い人だといいます。

毎日が幸せだと長生きすることも分かっています。「あなたは幸せですか?」という質問に、「はい」と答えた人は、「いいえ」と答えた人より寿命が9.4年長かったという研究があります。

明るい表情、元気な姿勢、前向きな態度を意識して

もう一つ、アメリカの有名な研究で、「尼僧研究」と呼ばれるものを紹介します。修道院に住む女性180人が1930年代に書いた日記を分析したもので、2001年に発表されました。「楽しい」「うれしい」「幸せ」といった言葉をポジティブワードとし、「寂しい」「悲しい」「つらい」といった言葉をネガティブワードとして数値化し、グループに分けました。60年後には、日記を書いた修道女は皆、80歳を過ぎていましたが、ポジティブグループは90%の方が存命だったのに対し、ネガティブグループは34%でした。しかも、ポジティブグループは健康で、ネガティブグループは病気を抱えていた人が多かったのです。修道女ですから、同じ場所に住み、食事も、受けられる医療も同じです。規則正しい生活をし、お酒や喫煙はありません。それでもこれだけの差が出たということで、世界中で話題となりました。

心の状態は、目には見えませんが、尼僧研究では「言葉」に注目することで、心と健康の関係を明らかにしました。しかし、実は、心の状態というのは、よく見えているのです。「表情」「姿勢」「態度」に表れるからです。

意識したら変えることができる「表情」「姿勢」「態度」を変えていくと、心も変わり始めます。明るい表情、元気な姿勢、前向きな態度を意識すると、毎日が楽しくなりますよ。

今月の笑いは表情筋と姿勢を良くする笑いです。両手にソフトクリームを持ち、思いっきり舌を伸ばしてなめながら笑うソフトクリーム笑いと、空を見上げながら両手を上に伸ばすスーパーマン笑いで、声を出して笑ってみてください。

(クリックして動画再生)

プロフィル

たかだ・よしこ 兵庫・神戸市生まれ。2009年にインドで笑いヨガを学び、帰国後に日本笑いヨガ協会を設立した。笑いは呼吸であると考え、一生「健康」と「ごきげん」を手に入れられる笑トレや笑いケアを開発し、高齢者のケア現場や企業のストレスケアの分野でも指導・講演活動を行っている。日本応用老年学会理事。著書に『ボケないための笑いヨガ』(春陽堂書店)、『大人の笑トレ』(ゴルフダイジェスト社)など。