立正佼成会 庭野日鑛会長 1月の法話から

情操を育むことこそ

仏教には、「本来の面目」という言葉があります。これは、ありのままで、少しも人為(じんい)を加えない衆生の心の本性(ほんしょう)という意味合いになります。仏性ということです。

「本来の面目」とは、決して人と比べるものではなくて、それぞれの人のよいところがどんどん出るような教育が大事だということです。仏教的には、一人ひとりの本来の面目を発揮する、という意味合いになると思います。

今日(こんにち)の教育では、どうしても理知的な、理論的なものを多く学ぶことに重きが置かれるような感じもないわけではありません。人生は理知よりも、むしろ多くは感情の中にある。私たちは人生を理知で把握するよりも、深い情操で把握することが大切である。うるおいのない人生は疲れる、といわれています。情操を豊かにしていくことが、大事ではないかと思います。

どう考えるかよりは、どう感ずるかということが、より多く、この人生を動かしているといわれます。日々の生活の中でも、どう感ずるかが、どうも人間を動かしているように思います。
(1月15日)

画・茨木 祥之

現象をどう捉えるか

私が学んだことの中に、今ここに生かされている一回の人生ごとに、不幸や悲劇は存在しない、そう思う心があるだけだという心をつくり上げて、生を全うすることが大事だという意味合いの言葉があります。

不幸や悲劇は、私たちがそれを不幸だと思い込んでいる、悲劇だと思い込んでいる、ということです。よくよく考えてみますと、全ては仏さまのお諭(さと)しであり、どんな苦しいことが起きても、その苦を味わわせて、その人を磨くという意味で仏さまが私たちに与えられていることです。それは不幸なことではなくて有り難いことなのだと受け取ることができる心、問題の捉え方を確立していくと、人生には、あまり不幸や悲劇ということは存在しないのではないか。そういう心をつくり上げていくことが、信仰の道を歩む者同士、とても大切ではないかと受け取らせて頂いています。

私たちの魂の成長にとっては、目の前の現象をどう捉えるかが、とても大事です。
(1月15日)

創造力を働かせて

昨日、昨年までで退任された教会長さん、あるいは職員の中で定年を迎えた方々と懇談しました。そうした方々の話をいろいろと聞いていますと、退任してからも世の中のためになりたい、と言われる方がとても多くおられました。

私たち人間は、一つの小宇宙といわれています。宇宙は常に創造変化していますが、人間もやはり現実の生き方において、常に創造変化する、活動することが大事です。もう年だから何もしないとなってしまうと、ますます創造意欲が失われるそうです。

人間にとって、精神が安定する一番大事なことは働くことといわれています。何もなくて退屈すると、心身ともに老化して弱ってしまうそうです。世の中のためになること、地元の人たちのためになること、そうした何か創造するものを見つけて共に活動することを通してこそ、私たちの健康も保たれていくとされています。

私なども、大聖堂に皆さまがおいでになりますから、何か用意しなければならないという気持ちになり、それが一つの創造的な働きとなります。そういう意味で、皆さまの前でお話をさせて頂くことが、本当におかげさまであると思っています。
(1月15日)