バチカンから見た世界(113) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

宗教を利用したテロが再燃することを懸念――G20諸宗教フォーラムが開催

20カ国・地域首脳会議(G20)の議長国を務めるイタリアのドラギ首相は9月2日、記者会見の席上、イスラーム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタン情勢について協議するG20の特別会合を開催する意向を表明した。時期は、現在行われている国連総会終了後の10月を予定している。

この直後、G20に向けては、「宗教科学のためのヨハネ二十三世教皇財団」が、同国ボローニャで9月12日から14日まで、世界の諸宗教指導者たちによる「G20諸宗教フォーラム」を開催することを発表していた。G20の特別会合への提言をまとめることがフォーラムの目的だ。タリバンの復権によって世界で「宗教」を利用したテロが再燃することへの懸念が広がっており、同財団の指導者であるアルベルト・メッローニ教授は、フォーラムの開催を前に、「新型コロナウイルスだけでなく、戦争や暴力、(争いの)小さな種からもたらされる憎悪のパンデミック(世界的大流行)にも焦点を当てる」と趣旨を説明。さらに「(諸宗教)対話の場は、流された血に対する責任を負い、宗教指導者、政治指導者、研究者が、それぞれの立場で(問題に)応えていく場となり得る」と語っていた。

ボローニャで開催されたフォーラムには、オンラインでの参加も含め世界70カ国から370人の諸宗教指導者、政治指導者、国会議員、科学研究者、識者が出席。宗教指導者として、東方正教会コンスタンティノープル・エキュメニカル総主教のバルトロメオ一世、英国国教会のジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大主教、世界教会協議会(WCC)のイオアン・サウカ暫定総幹事、マッテオ・ズッピ枢機卿(ボローニャ大司教)、世界ユダヤ人会議のロナルド・ラウダー会長が参加した。

ドラギ首相や欧州議会のサッソーリ議長をはじめ、各界の代表者がスピーチを行った。全体会議、テーマ別会合を通じて、『諸宗教対話における国会議員の役割』『外交政策と宗教』『宗教と信仰の自由―少数派の擁護』『宗教文化遺産―紛争、擁護、和解と持続性のある発展』『人種差別―和解へ向けての宗教者のリーダーシップ』『教育と宗教の多様性』『COP26(第26回気候変動枠組み条約締約国会議)への公開書簡』『性の平等―宗教的否定と支援』『新型コロナウイルスの世界的な流行後の最緊急課題』などについて協議し、提言をまとめた。