気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(40) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)

学習発表会の時間が来た。机の上には一人ひとりの「学びのワールド」が広がっている。虫の標本があったり、薬草の効能について調べて作った薬草オイルがあったりと、目を見張った。紙作りの工程をイラストで紹介し、実演する子もいた。たくさんの絵画を展示する子、実際にお菓子を作り、お客さん一人ひとりに出来たての蒸しパンを配る、かわいい女の子の姿もあった。

舞台発表では、ある男の子が古代エジプトの物語をタイ語と英語でプレゼンテーションした。高学年の男の子は、たくさんの工具を持って自分の木工作品を紹介。森林火災の消火活動を経験した女の子は、火事の原因となり得るものについて考察し、予防策をプレゼンした。実に個性的で多様な学習内容だった。そして何より、堂々とした子供たちの語り口に、私はうれしい驚きで胸がいっぱいになった。

森林火災の予防策を発表する小学生。各自の興味を掘り下げ、学びを深めるのがホームスクーリングの特長だ

代表のムーさんほか、教育省の人、集まった保護者たちは、学習発表者の子供たちの様子を見て評価する。ただ評定を下すだけではなく子供たち、一人ひとりを励まし、笑顔で応援していく。その雰囲気がまた優しかった。私はその様子を見ながら、やはりこうした優しさが感じられる中で、できるだけ子供の成長を見守っていきたいと強く思った。

どんな教育を子供に受けさせればいいか。これは私を含めほとんどの保護者が思い悩むテーマであると思う。だが、この学校に入れさえすれば、この教材を使いさえすれば、この先生につけば、子供にふさわしい学習環境が確実に与えられ、必ず幸せになれるという保証はどこにもない。子供が自分の好きなことを好きと感じ、より学びたいことを実際に試してみることができ、それを見守り応援してくれる環境があること――それが、今の私と夫が息子に与えられる最善の環境であると信じている。

きっと試行錯誤の旅になるだろう。でも、その旅は息子の成長だけでなく、見守りながら共に歩む私たち夫婦にとっても、親としての成長を促してくれるに違いない。イキイキとした学びを大切にしながら、ゆっくりゆっくりと進めばいい。私たちのペースで歩みを始めていこうと今は思う。

プロフィル

うらさき・まさよ 翻訳家。1972年、沖縄県生まれ。東京工業大学大学院博士課程修了。大学在学中からタイ仏教や開発僧について研究し、その後、タイのチュラロンコン大学に留学した。現在はタイ東北部ナコンラーチャシーマー県にある瞑想(めいそう)修行場「ウィリヤダンマ・アシュラム」(旧ライトハウス)でタイ人の夫と息子の3人で生活している。note(https://note.mu/urasakimasayo)にて毎朝タイ仏教の説法を翻訳し発信している。