気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(40) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)

タイでホームスクーリング(後編) イキイキした子供たちの姿に学ぶ教育のかたち

「6歳を迎えた息子を、ホームスクーリングで育てよう!」。私たち夫婦はそう決意した。ちょうど、ホームスクーリングを実践する家族をサポートするNGOの代表者ムーさんとご縁があった。そのNGOは「バーン・スワンパー・スックチャイ(幸せの森の家)」という。

今年の2月上旬、「ホームスクーリングで学ぶ子供たちの年1回の学習発表会が行われるから、ぜひ見学を」とのお誘いがあり、家族で参加した。ちなみに、この学習発表会は、教育省が子供たちの習熟度を確認することも兼ねている。

会場に着くと、ホームスクーリングを選択した約20家族が集まっていた。それぞれに小さなブースを作り、発表の準備をしている。皆を見渡せる場所には、手作りの舞台が整えられていた。

この会場となったNGOの拠点には、古木やタイヤを再利用して作ったたくさんの遊具が設置されている。発表会が始まるまで、子供たちはロープウエーやブランコ、ハンモックなどで元気いっぱいに遊んでいた。息子もすぐにそれらの遊具に飛びついた。初めて会うお兄ちゃん、お姉ちゃんたちばかりだったが、何の躊躇(ちゅうちょ)もなく一緒に遊び始めた。

私は内心、ホームスクーリングで学ぶ子供たちは集団生活をしていないから、人付き合いが苦手なのではないか、と懸念していた。しかし、その懸念は子供たちが自然に遊ぶ姿を見て一気に吹き飛んだ。ロープウエーの列に並び、うまく遊べるか不安そうにしていた息子。少しぽっちゃりした体格のお兄ちゃんがその様子に気づいてくれて、息子に声を掛けてくれた。お兄ちゃんは、手作りロープウエーのタイヤ部分に息子をうまく乗せようと、あれこれ試行錯誤しながら奮闘してくれた。それはまるで自分の弟に接するかのような、自然な振る舞いだった。彼以外の子供たちも変に気を使ったりすることなく、子供らしく伸び伸びと遊んでいた。

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