気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(31) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)
健康、お金、時間。全てが揃ってから、いつか行動しようと、私は頭のどこかで思っていた。しかし、この説法のおかげでハッと目が覚めた。特に、遠方に住む母や妹家族との時間についてだ。遠方であるがゆえに、感じているのかもしれない。時間ができてから、お金がたまってから、と思っているうちに、家族の誰かにもしもの事があっても、何の不思議もない。
お金も時間もかかるけれど、今、互いに健康で、互いを思い合える幸せを優先しよう、と思った。すると不思議なことに、お金も時間も工夫する知恵が出てくる。一昔前に比べると、今は海外を行き来することが格段に楽になっている。
いとこ同士、子供たちが発する元気な声、おばあちゃんが孫たちと一緒に写る写真、働き世代の私や夫、妹夫婦。それぞれの年代で享受できる幸せがある。お金、時間、健康の全てが完璧に揃うことを待たずとも、幸せはもう、今、ここにあることを実感した沖縄への旅だった。
プロフィル
うらさき・まさよ 翻訳家。1972年、沖縄県生まれ。東京工業大学大学院博士課程修了。大学在学中からタイ仏教や開発僧について研究し、その後、タイのチュラロンコン大学に留学した。現在はタイ東北部ナコンラーチャシーマー県にある瞑想(めいそう)修行場「ウィリヤダンマ・アシュラム」(旧ライトハウス)でタイ人の夫と息子の3人で生活している。note(https://note.mu/urasakimasayo)にて毎朝タイ仏教の説法を翻訳し発信している。