気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(22) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)
あなたが大事にしていることを、僕も大事にするよ
日本各地を10日間、一人旅した。今、タイへと戻る空港のロビーでこの原稿を書いている。旅の主な目的は、講演や瞑想(めいそう)会。縁ある方々からお招き頂き、名古屋、石川、大阪、京都、東京を動き回る充実した旅であった。
私は旅をしたり、人と人とをつなげたり、企画を考えて実現していくのが大好きだ。ありがたいことに、今、マインドフルネスという言葉がさまざまな業界の方から興味を持たれてきて、気づきの瞑想やタイ仏教についての関心が高まっていると感じている。故郷の日本で、これまでの私のささやかな学びを仲間と共有できるのは、何よりの喜びである。
ただ、私には現在4歳半の息子がいる。だから私が旅をしている間は、タイ人の夫がワンオペ育児を余儀なくされる。幸か不幸か、息子は超がつくほどのお父さんっ子だ。夫もまたそれがまんざらではないようで、顔や性格もそっくりな二人はいつも、双子のように一緒である。
夫は出家生活が長かったからか、炊事、洗濯、掃除などを器用にこなす。「女は家にいるもの!」と私に強要することなく、お互いができることを協力し合いながらやっている。今、彼は「食べるための農業」に従事し、パパイヤ、唐辛子、ネギ、ニンニク、キノコ……と、数え切れないほどの作物をつくっている。これらは私たちの住むウィリヤダンマ・アシュラム(旧ライトハウス)のお坊さまやスタッフ、一時的に修行に訪れる方たちの口にも入る。
売るための農業ではないので、今、彼にはほとんど現金収入がない。現金は入ってこないが、仕事は一生懸命やっていて、実に楽しそう。彼は現金がそれほど入らないことを、あまり苦にはしていない様子だ。