バチカンから見た世界(50) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

ホロコースト 欧州で終わらぬ過去の清算

第二次世界大戦中、ドイツ・ナチスのホロコーストによって、100万人とも200万人とも推定されるユダヤ人やロマ人、障害者、性的マイノリティーが殺害された。ポーランドにあったドイツ軍のアウシュビッツ強制収容所がソ連軍によって解放されたのは、1945年1月27日のことだ。

国連総会は2005年、全ての加盟国がホロコーストの教訓を次世代に伝え、憎悪、敵対感情、人種差別、偏見が持つ危険性を永遠に人々に警告することを目的に、その日を「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」と定めた。これに先立つ2000年、イタリア議会は、1月27日を「ホロコースト犠牲者記憶の日」と定め、各種の式典、会合、イベント、反省会を企画して風化させないための法律を可決していた。

北米、欧州、中央アジアの57カ国が加盟する世界最大の地域安全保障機構である欧州安全保障協力機構(OSCE)の現在の議長は、イタリアのアルファノ外相が務めている。議長国であるイタリアの外務省は1月29日、「記憶の日」の行事として、ローマで『反ユダヤ主義と反ユダヤ主義の憎悪に関連する犯罪と闘うための諸国家、諸機関、個人の責任』と題する国際会議を開催し、加盟国の代表者が参加した。

各国からの参加者は、開会前にバチカンを訪問し、ローマ教皇フランシスコに謁見(えっけん)した。この中で、教皇は、「闘うべき相手は、あらゆる形で表現される憎悪のみならず、無関心という、もっと根源的なものである」とし、正しいと認知していたとしても、正しい行為の実行を惑わせ、阻止させるのが無関心であると明示。世界は、あらゆる人が緊密に結び付き合っているにも関わらず、他者に無関心であることは、現代社会をさらに危険なものにすると訴えた。さらに、無関心は現代社会を病に陥らせる「ウイルス」であり、「これが、悪の根、(アウシュビッツのような)絶望と沈黙をもたらす死の根源だ」と話した。

また、現代人が人間性や、他者に対する人間的理解を回復し、自らの冷淡さを克服していくには、一人ひとりが、ホロコーストの記憶の中に、「自身も関係があると組み入れて考える能力が必要とされる」と強調。人類の歴史は、全ての人と共に建設されるべきものであるとし、そのためには、「共に生きた、信頼のある記憶を必要とする」と自らの確信を述べた。