共生へ――現代に伝える神道のこころ(14) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部教授)

伊勢神宮の第62回神宮式年遷宮に際し、平成十九(二〇〇七)年に行われた御木曳(おきひき)行事。市民が参加できる数少ない行事で、伊勢の町は期間中、勇壮な掛け声と木遣(きやり)音頭に包まれる

貴重な資材をよりよく生かす 式年遷宮に見る持続可能な開発

先日、電車に乗った際に、車両内の全ての広告が、SDGs(持続可能な開発目標)についての啓発ポスターであるのに気づいた。すっかり社会の中で馴染(なじ)んできた用語となったSDGsに関する啓発が、平成二十八(二〇一六)年に開始されてからはや6年。街を歩けば、カラフルな輪が特徴的なSDGsのバッジを、スーツやジャケットの襟に身に着けるビジネスマンの姿を多く見かける。

小学校など学校教育の現場でも、授業で児童がSDGsについて学び、自らの持続可能な取り組みを発表するような機会もあると聞く。我が国のみならず、令和十二(二〇三〇)年までに先進国、開発途上国を問わず、国際社会が一丸となって17の目標、169のターゲットを達成すべく、種々の取り組みがなされている状況にある。

翻って考えてみると、我が国でも持続可能な社会への転換を目指して、これまでもさまざまな取り組みがなされてきた。しかしながら、地球温暖化に起因する大規模な自然災害の発生や、世界各国での貧富の差の拡大、新型コロナウイルス感染症の流行に見られる国境を超えた感染防止対策など、官民問わず多くの課題が山積する状況だ。

SDGsに関連する話題の一つとして小生が思い出すのは、「持続可能な開発」という言葉を初めて聞いたシンポジウムである。それは、平成六(一九九四)年九月二十四日から二十六日まで、三重県伊勢市の皇學館大学を会場に開催された「千年の森シンポジウム」である。

このシンポジウムは、「千年の森に集う会」(会長・佐藤大七郎東京大学名誉教授)の主催によるもので、開催の契機となったのは、平成五(一九九三)年十月に斎行された第61回の神宮式年遷宮(じんぐうしきねんせんぐう)と、前年六月にブラジルのリオデジャネイロで採択された国連環境開発会議(地球サミット)でのリオ宣言だ。リオ宣言は平成九(一九九七)年の京都議定書、平成二十七(二〇一五)年のパリ協定という地球温暖化対策、温室効果ガス排出問題の取り組みに関する国際協定への流れを生み出す契機となった国際宣言である。同会はシンポジウムで、地球温暖化克服の方途の一つとして「鎮守の森にならった保続的森林」のシステムづくりを「伊勢宣言」として提唱した。その後、同会の事業の一部を引き継いだ「千年の森づくり委員会」が、平成十二(二〇〇〇)年十二月に「千年の森基本構想案」を東京都港湾局に提出。東京湾岸中央防波堤内側埋立地を、自然生態系を恢復(かいふく)する循環型の海上公園緑地として整備すべき、とする意見提案を行ったことでも知られている。

【次ページ:余材や古材などを各神社の社殿として利用】