利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(61) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

画・国井 節

ロシアのウクライナ侵攻

コロナ禍がなお続く中、2月24日にウクライナへのロシアの侵攻が生じて世界が震撼(しんかん)している。理由はともあれ、ロシア一国の判断による他国への武力侵攻は国際法違反に他ならず、これを許したら、世界に戦争が次々と起こりかねない。ナチス・ドイツのポーランド侵略を想起させる深刻な事件であり、それが第二次世界大戦の起点となったように、世界大戦への導火線になることすら憂慮される。

NATO(北大西洋条約機構)やアメリカが武力介入をすれば、このような展開が起こりかねない。さらに、プーチン大統領の心理状態に不安があることを考えれば核戦争の危険すら考えられるので、これらの諸国は武力介入を自制しつつ厳しい経済制裁の措置に踏み切った。ウクライナ側の士気が高く抵抗を続けているので、短期制圧というロシア側の目論見(もくろみ)は失敗して長期化の様相を見せている。

しかもロシアはウクライナ北部のチェルノブイリ原発・南東部のザポリージャ原発・東部ハリコフの原子力研究施設などを占拠・攻撃した。ザポリージャ原発は欧州最大級なので、もし爆発すれば深刻な事態となり、想像を絶する被害がヨーロッパに生じかねない。

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