利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(45) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

画・国井 節

いま話題の大ヒット作品:「半沢直樹」と「鬼滅の刃」

最近、大ヒット作が立て続けに生まれている。テレビでは2013年に大反響を呼んだ「半沢直樹」が今年の7月19日から9月27日まで放送され、最終回は視聴率32.7%と2013年最終回以来の高い数字で、総合視聴率(リアルタイムとタイムシフトの視聴率の合計)は44.1%という。

「やられたらやり返す、倍返しだ!!」「クソ上司め、覚えていやがれ!!」(2013年版)という半沢の文句が有名なように、権力者の不正に対して正しい道を貫き、友人たちと協力して不正を暴いて正義を回復するという作品だ。

今回のシリーズでは、銀行から証券会社に出向を命じられた半沢が、新興IT企業の買収案件を通じて、彼を恨む部長など親会社の銀行側の不正を暴く。銀行復帰後には、経営不振に陥った「帝国航空」の再建を任されて、債権放棄を要求する国土交通大臣や与党幹事長の政治的圧力に抗して自力再建路線を貫徹しようとし、幹事長が銀行内派閥と結託して行っていた巨額不正を突き止めて失脚させる。

続いて大きな話題になっている「鬼滅の刃」は、『週刊少年ジャンプ』で連載されて昨年にテレビアニメ化され、10月16日に映画が公開されて10日間で興行収入100億円突破という日本最速記録をつくった。

大正時代に、主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)青年が、鬼に一家を惨殺され、唯一生き残った妹の禰豆子(ねずこ)も鬼と化してしまった。鬼を退治する鬼殺隊員たちに出会い、妹をはじめ人々を救うため、厳しい剣術修行を経て入隊が認められ、「柱」と呼ばれる最強隊員たちに導かれつつ能力を開花させて、強大な鬼たちとの死闘を繰り広げる。

これらの物語が、今という時代に大好評を博しているのは、なぜだろうか。

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