『利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割』(22) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

画・国井 節

明治からの公共的政治の系譜

前回に述べたように、公議・公論・公道という公共的政治の理念は、幕末に生まれて「五箇条の御誓文」にも現れ、明治憲法下における議会政治として限定的ながら実現した。専制政府との抗争を経て政党が台頭し、1924-32年には、衆議院の多数党が内閣を組織する「憲政の常道」として、立憲政友会と立憲民政党との二大政党による政権交代が行われるようになったのだ。

戦前の政治がいつも権威主義や専制によって覆われていたのではなく、短期間ながら公論に基づく議会政治が実現したことは記憶に値する。現在の民主主義は戦後にGHQ(連合国軍総司令部)によって与えられたものだという意見を耳にすることがあるが、それだけのものではなく、明治以来の政治史の伝統の上に立脚しているのだ。

二大政党政治の後、ファシズムが席巻して日本政治は再び専制政治に戻り、無謀な第二次世界大戦へと突入して敗戦の憂き目を見た。戦後、その反省のもとに日本国憲法が生まれ、曲がりなりにも、日本は大きな戦争はせずに平和を維持してきた。2009年には、「新しい公共」という理想を掲げて民主党が政権交代を実現した。しかしその後、政治は急展開し、今や民主主義の形骸化や議会の危機が指摘されている。この難局から脱出するための知恵を、明治維新から求めることはできるだろうか。

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