おもかげを探して どんど晴れ(6) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)

それから1年が経過して、私は月命日に体育館に立ち寄りました。体育館を管理している行政の職員の方と、当時の話を振り返る時間がありました。それは、その職員の方も当時は遺族として、この体育館に通っていたと話してくれたからです。

「普通、幽霊って夜に出るものだと思っていたのですが、ここの幽霊は昼間に出ます。しかも、子どもなんですね」。体育館で、一人で遊んでいるようで、マイクのスイッチを勝手に入れてイタズラするので、「ちゃんと切っておいてね、私怒られちゃうよ!」と言うと、スイッチを切っておいてくれる優しい子なんですよと。バスケットボールで一人で遊んでいたりね、時々体育館の隅にボールが一つ置き忘れられていたりね、と笑みを浮かべて話してくれました。

おそらくこの子は引き取ってくれる家族も被災されたのか、帰る場所も分からないのだろうと。「当時からみんなが出入りしていて、たくさんの人たちがこの体育館にいて、自分の安心できる場所になったのではないのかな?」。そう話し合いました。体育館の入り口にお菓子を置くと、しばらく静かになるのだと、うれしそうに教えてくれました。

毎年、この体育館では慰霊祭が行われます。行政の予算に限りがあるので、いつまで行われるのかも分かりません。いつの日か、この子が神仏の胸に抱かれる日が来ることを、私たちは今はただ祈るしかありません。

※タイトルにある「どんど晴れ」とは、どんなに空に暗雲が立ち込めても、そこには必ず一筋の光がさし、その光が少しずつ広がって、やがて真っ青な晴天になるんだよ、という意味です

プロフィル

ささはら・るいこ 1972年、北海道生まれ。株式会社「桜」代表取締役。これまでに復元納棺師として多くの人々を見送ってきた。全国で「いのちの授業」や技術講習会の講師としても活躍中。「シチズン・オブ・ザ・イヤー」、社会貢献支援財団社会貢献賞などを受賞。著書に『おもかげ復元師』『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)など。

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