おもかげを探して どんど晴れ(3) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)
生きること、死を迎えること
「おもかげ復元師」として私は、亡くなられたご本人とそのご家族と話し合い、その時間を大切にしてご遺体を棺(ひつぎ)に納める「参加型納棺」を仕事にしています。亡くなられた方に関わる実践の場で、心(悲嘆)と体(遺体)と向き合う専門職です。
大切な人の死期が迫っている時、送る側・看取りをする側にはいろいろな考えが湧いてきます。実は、亡くなられる方、死を迎えるご本人も当然ながら、いろいろと考えておられるのです。
例えば、床に伏せっている状態で、「いろいろな人に覗(のぞ)き込まれるのはとても苦手で」と言う方がいます。家族に心配させているのがつらいのです。家族がトイレに行っている間、買い物に行っている間、用事を足している間、その隙にできれば一人で静かに息を引き取りたいと――実際、そう望まれる方から、相談を受けることが多くあります。
一人で静かに息を引き取りたいと希望されていた方は、不思議とそういう最期を迎える場合が少なくないようです。<息を引き取るタイミングは、実は自在なのかな?>と思うこともあります。ただ、ご家族は、「看取れなかった」という悲嘆の思いを抱えて生きていかなければなりません。ご本人からは生前、「家族に心配をかけるのがつらいので、私の思いは黙っていてほしいけれど、私が死んだ後なら、伝えても構いませんから」と言われることが多く、その方が亡くなった後に、打ち明けます。ご家族の心情に配慮しながら、「家族に心配させるから内緒でというご本人の希望で」との言葉を添えて、お伝えしています。
この時、ご家族は、ご本人の気持ちと改めて出会い直す機会になります。
「そういえばシャイだったから! 本人らしいです!」。こんな言葉が返ってくることもしばしば。どのように死を迎えたのかばかりにとらわれるのでなく、どのように生きたのかを見て頂くことで、生前の関係性が戻ってくるのです。