おもかげを探して どんど晴れ(2) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)

一緒に過ごした時間は二度と戻らない。けれど、納棺を通して、共に過ごした時間が確かにあったことを振り返り、それぞれの心に残っている思い出を分かち合って、亡き人がどれほど自分にとって大切であったかを確認し合うことができるのです。お母さんの笑顔と、子どもさんたちの笑顔が忘れられない時間になりました。

お母さんに生前、お会いしたことがありました。あの時、お母さんは私に、「納棺は、笹原さんにしてもらいたい」と、笑顔で言われました。病気を告知された時期だったと、ご家族から納棺の際に伺いました。あの時、「どうしたの?」って、どうして一言、私は聞かなかったのだろう。もっと真剣に伺うべきだった。後悔の気持ちは絶えません。ただ、その中で、分かったことがありました。

後悔の気持ちが湧き起こるというのはお母さんが、私の中でとても大切な人になっているということ。

出会いとは、その瞬間だけでなく、相手の歩んできた人生とも向き合う、そういう意味もあるのでしょう。そこに自分の人生が重なり、さらにさかのぼって、過去の出会いまでも濃密なものになっていくと感じます。亡くなった方を棺に納めるまでの納棺は、多くの方々との出会いによって、一人ひとりの人生が築かれていることを実感する、全ての人にとってとても重要な時間だと思うのです。

今回の出会いも、一生大切にしていきたいと心に誓いました。

※タイトルにある「どんど晴れ」とは、どんなに空に暗雲が立ち込めても、そこには必ず一筋の光がさし、その光が少しずつ広がって、やがて真っ青な晴天になるんだよ、という意味です

プロフィル

ささはら・るいこ 1972年、北海道生まれ。株式会社「桜」代表取締役。これまでに復元納棺師として多くの人々を見送ってきた。全国で「いのちの授業」や技術講習会の講師としても活躍中。「シチズン・オブ・ザ・イヤー」、社会貢献支援財団社会貢献賞などを受賞。著書に『おもかげ復元師』『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)など。

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