利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(13) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

この憲法改定がもたらすもの

安倍首相は、9条について第2項は存続させて、自衛隊の存在を明記するような第3項を加えるという「加憲」を提案した。今も自衛隊は存在するのだから、現状のままであって、憲法違反という議論を終わりにするためだと主張している。

でも、そうではない。一昨年の安保法制審議において野党や憲法学者の大多数が違憲と主張した。法律の世界においては後からできた法律が優先するという原則が存在するから、このような憲法改正を行えば、安保法制を合憲と主張しやすくなる。つまり、海外において同盟国が攻撃を受けた時に、その戦争に日本も加わって武力を行使しても、違憲という批判を受けにくくなるわけだ。

さらに憲法9条による制約が大幅に減るから、海外で戦争が行いやすくなる。要するにこれは、日本国憲法独自の平和主義を半ばやめるということに他ならない。同時に、強行採決によって非民主主義的に「成立」させた法律を後から認めさせることになるから、民主主義もますます危うくなりかねない。

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