おもかげを探して どんど晴れ(1) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)

かつて災害で最愛のお孫さんを亡くしたおばあちゃんに、先日、再びお会いしました。会いに来てくださったおばあちゃんは「あれから10年経ちました」としみじみ言われました。お孫さんが好きだったケーキをいつも供えているのだと、あの時には想像もできなかった笑顔で、別れた後のことをいろいろ話してくださいました。

「あれから、いろんなことを考えていました。岩手県には座敷わらしの伝説があって、近所のとても物知りな優しいお婆さんが詳しいと聞いて、教えてもらいに行きました。『お孫さんも座敷わらしになって、誰かに幸せを運ぶようになるんだよ』と言ってくれて、きっと今、幸せを運ぶプロの招き猫の所で修行しているはず」と、そう話してもくれました。

座敷わらしは、生きていたくても生きられなかった子どもたちのことだといわれています。日本では古くから、座敷わらしに出逢うと願いが叶(かな)い、とても幸せになれるのだと語り継がれています。岩手県内でも座敷わらしに出逢える人気の宿は連日満室。伝承には、哀しい歴史の現実が含まれていますが、物語は語り継がれ、哀しみと共に生きる方法や命を考える大切な役割を担っているのだと感じました。

おもかげ復元師としてご縁を頂いた子どもたちが、きっと誰かに幸せを運んでくれているのではないか。私はそう思っています。

プロフィル

ささはら・るいこ 1972年、北海道生まれ。株式会社「桜」代表取締役。これまでに復元納棺師として多くの人々を見送ってきた。全国で「いのちの授業」や技術講習会の講師としても活躍中。「シチズン・オブ・ザ・イヤー」、社会貢献支援財団社会貢献賞などを受賞。著書に『おもかげ復元師』『おもかげ復元師の震災絵日記』(共にポプラ社)など。

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