法華経のこころ(12)

意柔軟に(如来寿量品)

「自由自在であり、しかも柔らかさと素直さのある心の持ち方が理想的です」

親せきの結婚式に出席した時のことだ。ちょうど、祝日でもあり、幼稚園に通う長男、二歳の二男も連れて行った。二人とも、一人前にネクタイをしめてもらい得意満面。広い結婚式場の館内をはしゃぎ回っていた。

新郎新婦の着付けも終わり、いよいよ式が始まる段になった。両家の親族が新郎新婦のあとに並びだした。その時、走り回っていた二男が、何かにつまずき、ころんだ。床に頭をぶつけるにぶい音がした。二男は、火がついたように泣き出した。見ると、おでこの一部が、みるみるはれていく。十円玉大の立派なたんこぶができた。

泣きやませようと、なだめすかしたが、泣き声は止まるどころか、ますます大きくなる。せっかくの厳かで晴れやかな雰囲気が台無しである。周囲も、どこか冷たい視線を私に向けた。

おろおろしていると、一人の老婦人が近づいてきて、二男の顔をのぞき込んだ。そして大きな声で言った。「おー、見事なたんこぶだこと。こぶは“よろこぶ”に通じて、こりゃ縁起がいい。いい子だ。いい子だ」。周りの人から、一斉に笑い声がもれた。

一瞬にして周囲の雰囲気を和ませた老夫人の柔らかな心。胸中で思わず合掌した。
(Z)

※意(こころ)柔軟(にゅうなん)に